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桃太郎のビジネスコラム 102

☆ アサヒの新しい提案☆

2006.05.30号  


527日、アサヒビールから新しい提案がTVCMで流れた。 03年の日本アカデミー賞で新人女優賞を受賞したこともある 小西真 奈美と、多数のレギュラー番組に出演し歌手・俳優・ナレーター・CMなどで豊かな才能を発揮している藤井 隆がそれぞれ出演する
2編である。
530日から発売される、苦みを抑えて飲み易さを追求した「アサヒぐびなま」のCMだ。
酵母の発酵度を抑えることによってエキス分を残し、独特のまろやかさを醸し出すことによる飲み易さを実現した。ホップの量を 3回に分けて添加することによって苦みを抑えながら華やかな香りを引き出しているという。
酒税の区分けでは「その他雑酒」となり、「アサヒ新生」「アサヒ新生3」に続く第3弾である。アサヒビールでは、味感と香りのバランスを特徴とした「アサヒぐびなま」の提案で、新ジヤンルにおける嗜好の流れを先取りする戦略である。
2編とも「アサヒぐびなま」を手にしながら、部屋にいるパートナーに向かって語りかけるというシーンは、ライフスタイルのなかに自然にビールがある光景を演出している。


アサヒビールは今年の13月期で 6年ぶりにキリンにトップシェアを譲ったが、サッポロやサントリーを後目に、両社で過激なトップシェア争いを演じている。
1949年に過度経済力集中排除法により大日本麦酒が分割され、朝日麦酒が設立された時には 36%のシェアを誇っていたが、80年代半ばには 10%を割るほどのジリ貧状態に陥り、サントリーに追い抜かれる寸前となり、経営危機も囁かれる状態となっていた。
メインバンクであった住友銀行(現・三井住友銀行)は、経営危機にあったマツダの再建を終えて銀行に戻っていた村井 勉副頭取を社長として送り込んだ。
村井社長の社内改革は、消費者志向・品質志向・人間性尊重・労使協調・共存共栄・社会的責任の六つの柱からなる経営理念を定め、10項目からなる社員の行動規範を提示した。
「企業イメージの向上計画(CI活動)」「全社的品質管理活動(TQC)」「業務効率化と事務環境整備」の三大テーマと、新しいロゴマークも作成して社内改革のシンボルとした。
これらの意識改革のもとで 5千人に及ぶ消費者を対象に、嗜好や味覚へのアンケート調査が行われた。この調査から中央研究所の酵母バンクにあった508号酵母が選ばれ、「コク」「キレ」のニーズが抽出された。これを元に86年に「アサヒ生ビール」が売り出された。
当時、プロゴルファーのビッグ2であった青木 功と尾崎将司をTVCMに起用し、「コクがあるのに、キレがある」と語らせて大ヒットさせた。
この年に同じく住友銀行から樋口廣太郎副頭取が村井社長の後任に就任した。樋口新社長の指揮のもとで「全国縦断百万人試飲キャンペーン」が行われ、新社長が自ら街頭に立ち消費者の意見を聞いた。そして日本人のビールに対する嗜好を根底から変えた「アサヒスーパードライ」が誕生する。873月に発売されたスーパードライは、時代の変化による消費者のライフスタイルや食生活の変化によって「スッキリした爽快さ」が求められている事を実証した。
使用する酵母や発酵技術を改良して発酵度合いを高め、糖度を低くしてアルコール度数を従来よりも高くした。その頃は4.5%前後が主流であったが、5.5%として「ドライ」で「辛口」な味に仕上げ、消費者からは爆発的な支持を受けた。同業他社も一斉に類似品を発売して「ドライ戦争」と云われたが、またしても社長自ら販売店の店頭に立ち、居酒屋にまで足を運んで販路開拓に勤めたことで、スーパードライの牙城は揺るぐことはなかった。


519日にアサヒビールのプレスリリースで、同社のお客様生活文化研究所がおこなった冷蔵庫と食品に関する意識調査の結果が発表された。
5月上旬から中旬にかけて、全国の20歳以上の男女を対象にしたインターネット調査を実施した。有効回答数は7603名であったという。
「冷たいものを食べたい、飲みたいとき」の設問では、風呂上がりの後(男女合計77.5%)、ひと仕事終わった後(男女合計36.4%)帰宅してすぐ(男女合計29.7%)となり、何かを終えた後に冷たいモノを食べたり飲んだりして、一区切りをつける欲求が有るようだ。
「冷蔵庫に常備している食品」の設問には、牛乳・乳製品(男女合計62.0%)アルコール類(男女合計61.3%)鶏卵(男女合計61.0%)の順となった。
「これからの季節、冷蔵庫にあると思わず笑みがこぼれてしまうもの」の設問では、ダントツ一位がビール類(男女合計72.0%、男性78.9%、女性65.0%)であった。二位はアイスクリーム(男女合計49.6%、男性42.7%、女性56.7%)で男女共一位、二位に挙げた。三位は缶チューハイ・カクテル(男女合計26.8%、男性23.1%、女性30.6%)で男性は五位、女性は三位に挙げた。
男性だけをみると三位に枝豆(26.4%)、四位に豆腐(24.6%)、八位に刺身(17.2%)となっており、酒の肴を挙げる人が多かった。暑い夏にはビールに枝豆をつまみながら、野球中継でも見るのが夏の風物詩となるのだろうか。
6月の 第3日曜日は父の日である。ビール各社は今月末頃から一斉に、メッセージ入りの
プレゼント用ビールを売り出す。ちなみにアサヒビールからは「お父さんありがとう!」と印刷した六缶パックのスーパードライが発売される。350性抜未療稿実勢価格は千百円前後だという。世のお父さん族としては、こんなのが冷蔵庫にさり気なく入っていたら、思わず笑みがこぼれて、ささやかな幸せを感じるのだが・・・。


929月に久々に生え抜きの瀬戸雄三が社長に就任した。アサヒの快進撃は止むことなく続き、98年にはキリンを抜き去り念願のビール業界トップに押し上げた。
991月にバトンを渡されて社長就任したのが福地茂雄であった。部長や取締役として村井・樋口・瀬戸と三代のカリスマ社長に仕え、V字回復を支え、そして達成した。
福地社長は就任当初、発泡酒は発売しないと宣言していた。しかし、福地社長は前言を撤回して012月に「アサヒ本生」(赤の本生)を発売した。これを非難された福地社長は「開発当初は、何度試作しても、どこか嫌な臭いが残っていて、本当に美味しいと思うモノが提供できなかった」と語っている。その後も商品開発チームは努力に努力を重ね、大麦エキスと海洋深層水と醸造方法を改善することによって、臭いが消え美味しさを実現。
これを試飲した福地社長は経営理念に照らした。
「アサヒビールグループは、最高の品質と心のこもった行動を通じて、お客様の満足を追求し、世界の人々の健康で豊かな社会の実現に貢献します」
そして、経営理念通りに良い品質のモノができたことを確信して発売にふみきった。発泡酒では最後発であったが、数ある発泡酒ブランドのなかで瞬く間に 2位に躍り出た。その結果、01年度のビールプラス発泡酒市場でトップシェアを獲得した。
消費者の健康志向の高まりに着目し、037月から発売した糖質50%減の機能性型発泡酒「本生 アクアブルー」(青の本生)も発売5ヶ月目には一千万ケースを突破した。
福地社長は発泡酒の発売当時を振り返って語っている。「出さないと言っていたメンツにこだわって、発泡酒を出さなかったら、経営を見失っていたかも知れない」




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