ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 107

☆ 神様の贈り物☆

2006.07.04号  


『天の上に住むカンナカムイ(雷神)の妹は、ひまをもてあまし、沙流川と鵡川の水源地、シシリムカ カムイヌプリにおりました。ところが川下のどのコタン(集落)からも、煙の立ち上る様子はありません。不思議に思ったカンナカムイの妹は、人々の話に耳をかたむけました。「飢饉で食べるものがない。どうしよう。」途方にくれている人々を救おうと、雷神の妹は、天に向かって大声で助けを求めました。天上のススランペッの畔にある、神の集落ではおおいに驚き、フクロウの女神が柳の枝を杖にして、魂を背負い地上に舞い降りました。柳の枝を、どの川に流そうかと、フクロウの女神は神々と話し合い、「沙流川の水はきれいだが、男川で気が荒いから、女川の鵡川に下ろしたほうがよいだろう」ということになったのです。魂を入れた柳の葉を、鵡川に流したところ、みるみるススハム(柳の葉の魚)になりました。』
アイヌの人達に「神がくれた魚」として伝わる話である。鵡川では柳葉魚(シシャモ)漁の前には神々へ豊漁を祈る儀式(シシャモカムイノミ)が今なお行われており、村の守り神と、海と川と河口の神々に豊漁を祈る儀式です。儀式のあとは柳葉魚が川に遡上する妨げになったり、霊魚である柳葉魚を汚してはならないと、人々は河口に近づかないと云われる。

北海道・胆振地方にある人口約1万人のむかわ町へ、年間30万人の観光客が訪れる。
特別な集客施設のない町に来る人達が目当てにしているのが「鵡川シシャモ」である。
北海道で獲れ、鵡川で塩味をつけて天日干しをした本物のシシャモを食べようと、この小さな町へ全国から愛食家達が訪ねてくる。
国内でシシャモが獲れるのは、北海道の太平洋沿岸部だけである。なかでも鵡川ブランドは最高級品とされ、全国の料亭やデパートを中心として人気を集めている。
鵡川漁業協同組合は 4月に、経済産業省が導入した地域団体商標として「鵡川ししゃも」を申請した。地元だけの水揚げでは量が足りないため、近隣で獲れたものも含め、鵡川で加工したシシャモを対象としている。味付けは町内 10社の加工業者が、塩の濃淡で個性を競い合っている。
鵡川がシシャモを地域ブランドとして意識し始めたのは、乱獲で不漁が続き91年から4年間休漁しなければならなかったのが契機となった。危機感を募らせた漁協の有志達が中心となり、「鵡川柳葉魚を語る会」を発足させ、孵化技術のシンポジュームなどを毎年開催し、漁協や加工業者、そして行政も一体となったブランドづくりに乗り出した。
95年に漁を再開したところ、休漁まえには 7トンにまで落ちていた漁獲量が 50トンまで
回復した。この年には「町の魚」にも指定され、野外でシシャモを焼いて食べる祭りも始まった。町では地元の駅伝を「ししゃもファミリー駅伝」と称した。加工業者は全国の物産展などで、ブランドを冠して販売するなど、官民が連携して全国に情報発信を始めた。
街では2000年に業態転換をして、シシャモ販売に特化するスーパーもでてきた。ブランドの知名度向上を背景に業績も伸び、客数は客年10%の増加となり、昨年は200の店舗に約8万人が来店したという。
評判を聞いた近畿日本ツーリストでは日高地方へのツアーに、シシャモの食事を取り入れ、道外からの観光客も訪れるようになった。90年代には毎年 5万人前後だった観光客は、高規格道路や道の駅の開設も追い風となり、04年には 30万人が来町し、シシャモが最大の観光資源となった。

シシャモはサケ目キュウリウオ科シシャモ属シシャモ種の魚である。全国で市販されている「子持ちシシャモ」の90%以上は北極海などに分布しているマロータス属カラフトシシャモ種の輸入魚である。輸入量がシシャモの国内漁獲量よりも圧倒的に多く、外観や食感が似ており低価格であるが、本物の味わいや風味には到底及ばない。市販されている輸入カラフトシシャモは鱗が小さく殆ど無いように見えるが、国産シシャモの鱗は大きくはっきりと判るので素人でも識別は可能である。
キュウリウオ科の魚類の多くは、春に海で産卵するが、シシャモはサケと同じように、秋に川を遡上して産卵する特異な生態をもっている。
親魚は 10月下旬から 11月下旬の、川の温度が急に下がり、満潮と日没が重なるときに河口から 1劼ら数匸緡の浅瀬で産卵する。オスは先に遡上してメスが遡上してくるのを待ち、メスは日没と共に群をなして遡上し、川底に産卵して明け方には川へ下るという。
メスは複数のオスと数回に分けて産卵し、オスは大きく伸びた尻ヒレでメスを巻き付けるように抱いて効率よく受精させるという。
産卵数は平均8000粒前後といわれ、受精卵は小砂利に付着させて春を待つ。翌年の 4月か 5月頃には、孵化した小魚は 8舒未梁腓さになって海へ下りる。海で成長した大部分の柳葉魚は 2年で親魚となり、生まれた川へ戻ってくる。

今年の3月、平成の大合併で穂別町と鵡川町が合併し、新町「むかわ町」が誕生した。
むかわ町は道央圏の南方に位置し、北海道の経済・文化の中心都市である札幌市や、空の玄関である千歳市、海の玄関である苫小牧市にも近く、日高・十勝地方の交通の要衝にある。面積は712.91平方劼虜拂垢っ老舛鬚靴討い襦
東西及び北部の三方が日高山脈系の外緑に囲まれ、南部は太平洋に面し、全国でも屈指の清流度を誇る一級河川鵡川が南北に従走し、海・山・川そして平地と多彩な自然環境に恵まれた、人口1600人の長閑な街である。
町ではブランド特産品であるシシャモ関連の事業に総力を挙げている。現在の漁獲量は年間100トン前後にとどまっており、流通関係者からは「ブランドとして売り込むには、資源を増やすことが必要」との声もある。鵡川漁協では周辺の市町村や漁協と連携して、共同で人口孵化と放流事業を手がけている。今後は河川の産卵環境整備などと共に、観光客の誘致政策にも取り組んでいる。
調理方法ではシシャモを火に焙って食べるだけでなく、天ぷらやフライ、柳葉魚鍋などの提案や、観光客には地元でしか食べられない柳葉魚の刺身・お寿司などのメニュー開発にも取り組み、地元のシシャモを全国へ展開すべく、地域が一体となっている。




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