ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 108

☆ 変化はビジネスチャンス☆

2006.07.11号  


「強い者が生き残るのではなく、賢い者が生き延びるのでもない、生き残ることが出来るのは変化に対応できる者である」ダーウィンが「種の起源」で語った言葉である。
刻一刻と時代は変化している。時代は決して私達を待ってはくれない。そして変化に適応したり、先取りした者だけが勝ち残る。世の変化について行くには、マインド(意識・意欲)
とスキル(知識・技能)、それと環境への適応力が要求される。そして、ひたすら学び、模索し、挑んで行くしかない。それを成し得た者だけが勝ち残る。
企業は変化対応業でなければならない。変化に対応できない事業者は、マーケットから退場命令が下されることになる。
酒類小売業が大苦戦している。時代の変化に乗り遅れて閉店している店が激増している。
それには三つの大きな環境(社会構造) の変化がある。一番目は大店法の廃止が酒類小売店に及ぼす影響や、酒販免許の需給調整要件緩和など規制緩和の進展がある。
二番目に消費構造の変化による小売業の業態変化である。女性の社会進出による買い物や家事の時間節約、それに伴う小売店側の便宜供与の必要や営業時間帯の変更がある。最近の女性は自分で得た収入は、自分の価値観による消費行動を取るようになってきた。
核家族化や少子高齢化による個食化の進展や消費の伸び悩みもある。高学歴化や高所得化により、消費者の方が雑誌やネット等からの情報収集で商品知識は小売店よりも高い場合もあり、価格よりも商品価値にもとづく消費志向がある。さらにモータリゼーション進展による週末まとめ買い、休日に家族連れで行く郊外大型店でのレジャーショッピング、商圏外地域でのワンストップショッピングなどが増加している傾向がある。
三番目は流通構造の変化である。これまでのような業種としての店舗から、コンビニやディスカウントショップのような業態店への変化がある。大型店の増加により卸業者を中抜きして、メーカーが直接小売店へ卸すようになり、今ではコンビニやスーパーでの酒類販売は常識となっている。
また、価格のオープンプライス化で、建値制が崩壊し低価格化が進行しており、少量仕入れの小規模小売店では、価格競争に追従していくのは不可能となっている。
これだけ大きな変化が起こると、それまでの商習慣の常識では通用しなくなってしまった。

最近は日常的な買い物に宅配サービスを利用する消費者が増えている。足腰が衰えて外出が辛い高齢者達は、多少価格は高くても便利な宅配サービスを選ぶ傾向がある。
北海道では全国平均を上回るスピードで高齢化が進んでおり、宅配サービスの広がりは景気回復の足取りが鈍いなか、消費を下支えする要因になりそうである。 4 5日の日経・
北海道版に興味ある記事が掲載されていた。
コープさっぽろでは、昨年度に宅配サービスを利用する組合員が 4%増加し、宅配売上高が初めて 500億円を超えた。店舗の方が価格も安く種類も多いが、利便性が受けているという。特に降雪時の利用が増えているデータもある。
一方、札幌にあるタクシー会社は、酒類コンビニのセイコーマートと提携して、買い物代行サービスを提供している。顧客の「お酒を買ってきて欲しい」との電話で、料金は商品代と店から顧客宅までのタクシー料金で計算される。タクシーを利用して自分で買い物に行く場合の片道料金で済むのと、出掛ける煩わしさが無いのが人気の秘訣だとか。
また、長崎屋苫小牧店では、高齢者に購入商品を無料で宅配するサービスを実施したところ、会員数がこの一年で千人から7千人に増加し、集客手段として効果が上がっている。
金融広報中央委員会の調査によると、60才代世帯の金融資産保有額は約 1700万円で、平均の 1000万円を上回り家計は豊である。 高齢者のニーズをうまく掴まえれば、個人消費拡大の可能性が大きいとしている。

旧来の酒類小売業が、チョットしたアイデアで大変身し、業界の常識を破った 24 時間
無料配達の酒類量販チェーンが快進撃を続けている。
一般の酒類小売業が酒販免許の既得権益に胡座をかいて、消費者サービスを疎かにしていたなかで、価格を追求した酒ディスカウンターが台頭するようになった。飲んだあとの始末が簡単で嵩張らない、缶入りビールやペットボトル入りドリンクか普及し、主婦がママチャリに乗って低価格を求めて買い出しに出るようになった。しかし、低価格店が続出して価格差がなくなると、消費者は満足せずに別のサービスを求めるようになった。一方、業務用の卸業者においては営業時間外の配達は疎か、土日祭日は休業で休日や深夜営業の飲食店にとっては、お客に提供する酒類の品切れや欠品は常識化していた。
そんな中で酒類量販チェーンカクヤスは「東京 23区内ならば何処でも、1 365日無休で、ビール一本から無料配達します」と至れり尽くせりのサービスを始め、同業他社の業績低迷を尻目に急成長を続けている。現在の三代目社長が入社した頃の、80年代前半の売上高は 7億円程度しかなかったが、前年度(05 5月期)には 493億円を売上げ、今期は550億円を目指している。
主力であった業務用卸は、互いにテリトリーを侵害しないのが業界の不文律で、後発業者には業務拡張の余地は無かった。転機となったのは兼営していたコンビニの再建に取り組んだ時だった。その頃に勢いを増していた酒ディスカウンターへの業態転換も検討したが、店舗の前は人通りが少ない、駐車スペースも取れない立地条件、店舗を移転するには資金がないの”ない・ない づくし”であった。
三代目は「配達」に活路を見いだすことにした。発想としては平凡な戦略ではあるが、データに基づき徹底してやり遂げたことが、三代目の非凡さが感じられる。
近所の団地を含むエリアを商圏と決め、チラシをきめ細かく撒いて「ビール一本からお届けします」とアピールした。始めた頃の配達料は300円だったが、消費者の「酒を宅配して欲しい」という潜在的需要は予想以上に大きく、瞬く間に受け入れられた。
業務用卸は売掛金の与信管理ノウハウが必要で、一般の酒類小売業では手を出せない。一方の業務用卸業者は家庭向けの少額宅配は効率が悪くて手を出さない。三代目はこの双方の隙間をつく戦略を建てた。
売上高に対する人件費率を計算してみると、配達営業の売上高人件費率は 3.5%で、店頭
営業の 5.5%を大幅に下回っていた。店頭よりコストが安いなら、配達料を貰う理由はな
くなり無料とした。業務用卸も 365日配送を実現して成長に拍車がかかった。

店名の「なんでも酒やカクヤス」は、「お客様のご要望に、なんでも応えたい」との思いを込めているとのこと。今年 46才になる三代目佐藤順一社長の語録を拾ってみた。
「事業の目的は、いつでも・どこでも・どれだけでも」
「小売業者には悪い癖がある。それはまず、先に自分たちの都合を考えてしまう癖です」
「原点はお客様の声。真摯に応えることで、お客様はリピーターとなり、売上は上がる」
「宅配ビール一本でも“有り難う御座います”。店頭と同等のサービスを心掛けるべきだ」
「自分でニーズがあると確信したら、“売れなさに耐え”お客様を信じて待ち続ける」
「事業拡大もサービスも、すべてはお客様、消費者のため。利益はあとからついてくる」
株式会社 カクヤス は 1921年(大正 10年)創業、本社は東京都北区、資本金 1億円の企業である。都内の業務用シェア1位、売上高も業界トップクラスを達成する成長ぶりである。
半径 1.2劼両Ψ(宅配エリア)を徹底的に耕し、その円を都内 23区内すべてに広げるというカクヤス独自のビジネスモデルを築き上げた。
『世の中が変化すれば、業界の常識も変わる。常識が変われば、そこにビジネスチャンスが眠っている』




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