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桃太郎のビジネスコラム 132

☆ オタクの聖地☆

2007.01.09号  


MDBネットサーベイが、街のイメージに対する調査を行い、「秋葉原のイメージ」に関する回答を得たところ、「電気街である」(91.1%)「オタクの街である」(80.7%)「雑然としている」(44.2%)との結果を得た。次いで、「秋葉原の話題で知っていること」の設問には「アキバ系」(71.0%)「萌え系」(49.4%)「メイドカフェ」(45.9%)「つくばエキスプレス」(40.3%)となった。
街のイメージが「電気街である」は当然としても「雑然としている」は昔の闇市や露天市の名残が頷ける結果でもある。話題では上位 3位までが「オタクの街」を裏付けている。
どのような人達を「オタク」と呼ぶのか調べてみた。80年代前半にコラムニストの中森明夫氏が命名したとされており、多くのお金と時間を使ってアニメやマンガ、ホビー、ゲーム、芸能人などを愛好する人達の総称とのことである。
では「萌え」とはどのような現象なのか大辞林で調べてみた。「ある人物やモノに対して、深い思いこみを抱く様子。その対象は実在するモノだけでなく、アニメーションのキャラクターなど空想上のモノにも及ぶ。NHKのアニメーション"恐竜惑星"のヒロイン鷺沢 萌に対して抱く、ロリータコンプレックスに始まるといわれる」とあった。つまり、オタクと言われる人達が抱く心理的な現象を表すらしい。
一般的に切手や骨董品の蒐集家は、コレクターとかマニアと称され、オタクとは呼ばない。
男性オタクは、我が道を行くタイプが多く、身なりも無頓着だし、他人の目もあまり気にせず、お金の使い方も一点集中型が多く、50万円もするフィギュア(人形)を平気で買う人も珍しくないと言う。玩具感覚でパソコンや周辺機器を買い集め、パーツをゲーム感覚で組立て、種々のお試し版ソフトウェアーを、批評してみせるパソコンファンもオタクの範疇であろう。大ヒットした「電車男」はアキバ系オタク青年の純愛物語でもあった。
一方の女性オタクは、コミック、アニメ、芸能人(ファン活動)、旅行、ファッションの 5
分野を特定している人が多く、他人の目を極端に気にすると言う。オタクに見られないように、普通のファッションにもお金を掛けているらしい。ちなみに、池袋のサンシャインビルの真向かいに、同人誌やアニメのDVD、キャラクター人形等のオタク商品を集めた
10店ほど並ぶ一角が「乙女ロード」と称され、週末には若い女性客で賑わっているとか。

秋葉原では 10年ほど前から、メイド喫茶とかコスプレ喫茶なるものが、出現して話題
となっていた。ルーツは 98年の東京キャラクターショーにおける「Piaキャロットブ
ース」にあるようだ。それ以前にもイベントなどで、客寄せサービスに実施されていたらしいが、営業としてではなかった。Piaキャロは人気ゲームに出てくる架空の、レストランを実際に造って営業を始めた。つまり、バーチャルの世界をリアルの世界に置き換えて、ビジネスとして実現したことが大きな反響を呼んだ。
02年になって販売不振に陥っていた大手パソコンショップのT・ZONEが、全国展開していたほぼ全ての店舗を閉店して、アミューズメント事業強化に乗りだした。昌平橋通り沿いのビルに、コスプレ喫茶「Mary‘s」をオープンさせた。ウェイトレスは昼にメイド服、夜にはそれぞれが独自のコスプレをするのが特徴であった。1Dayイベントとして、毎週水曜日には様々なコスプレを披露する、限定イベントを開催して、話題作りにも積極的に取り組んでいた。
Mary‘sのオープンは、オタク達の話題をさらっただけでなく、メイド喫茶の存在を一躍全国に知らしめたことが大きかった。マスコミ等にも取り上げられたのはT・ZONEのような老舗企業が参入したことと、変貌する秋葉原の姿と重ね合わせて注目された。

昨年の暮れにも秋葉原を象徴する灯が消えた。JR秋葉原駅に連なる建て屋で、電気製品以外の様々な商品を扱う店が入居する「アキハバラデパート」が閉店した。
オープンしたのは戦後の復興期である51年の晩秋であった。駅と商業施設が一体となった駅ビルは、当時では斬新な考え方であった。やがて訪れた家電ブームで、駅周辺は大きな賑わいを見せたが、同デパートでは生鮮品や雑貨、衣料品など電気製品以外の生活用品を売り続けた。80年代にはイベントスペースで実演販売が行われるようになり、近くにある電材屋から持ってきた直径 10个發△蹐ε点を、穴あき包丁で切ってみせる。缶切りや簡単に千切りができるスライサーなど、実演での販売は多くのヒット商品を生みだした。
軽妙な講釈に乗って買ってしまい、家に帰って叱られたお父さん達も多かったようだ。
02年にはアニメやフィギュアの専門店、コスプレ喫茶などを設けて、オタク路線を模索した時期もあったが、半世紀余りを経た建物の老朽化もあり、閉店の運びとなった。デパートを運営する東京圏駅ビル開発によると、跡地利用については現在未定だという。

東京都では 01年に秋葉原駅周辺の、旧国鉄の貨物駅跡地や神田青果市場跡地などを、
対象とする駅周辺の再開発に着手。秋葉原をIT産業の発信拠点として整備をする方針を打ち出した。電気街の魅力を生かしながらバランスの良い環境を整え、市場跡地は産・学が連携したIT拠点を形成する業務区域、その北側は居住区域、貨物駅跡地にはオフィスビル、その南側にはホテルなどを含む商業施設などとする再開発事業は、08年までに居住者3万人、外来者は10万人の増加を見込んでいる。
058月には秋葉原を基点として、茨城県つくば市と直結した「つくばエキスプレス」が開業した。つくば市には国を代表する研究機関を始め、約300の研究施設があり、技術のシーズは豊富である。首都圏での久々の大規模新線の開通は、鉄道過疎地であった沿線の人の流れが大きく変わり、一日に 18 6000人が利用している。
同年 9月には「家族揃って出掛けたくなるようなアミューズメント・ショップ」とのキャッチコピーで、「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」がオープンした。売場面積23800屬竜霏腑轡腑奪廚任△襦E絞淨り口は既存駅に新設された中央口改札に連なり、そこからは、つくばエキスプレスの乗り場にも繋がっている。
ヨドバシカメラが狙い、既存店が期待したのは、郊外に流失したファミリー層の呼び戻しであった。しかし、期待とは裏腹に既存の電気店は大苦戦を強いられ、茨城県のつくば市や守谷市、千葉県の流山市などの、つくばエキスプレス沿線にいる消費者はヨドバシに吸い込まれて行った。そして現在の秋葉原は前述したように、電気街に来る消費者とは別な人達を相手にしたビジネスが台頭してきている。
マニアックなホビーやゲーム、フィギュアを求めるオタク達の聖地となった街で、ネクタイを締めた人が行き交い、ヨドバシが呼び込むファミリー層が交錯する。巨大量販店が栄えて街が滅ぶのか、素人は近づかないオタクの街になってしまうのか、世界で唯一と呼ばれる個性的な電気街、秋葉原は岐路に立っているのかも知れない。




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