ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 16

☆ LVMHの5バリュー☆

2004.09.21号  

  出張で羽田空港を時々利用する。ある時にある現象に気が付いた。茶褐色にLとVの文字を組み合わせたデザインの、バックを持っている人がとても多いのだ。半月ほど前に上越新幹線に乗る機会が有り、今度は意識的にこのバックを、持っている人を東京駅で見渡してみると、やはり多いのだ。調べて見たら、国内で 2.500万個のルイ・ヴィトン製のバックが使用されているらしい。単純計算では5人に一人が持っている事になり、男性にも違和感が無く、複数個持っている女性も多い。これだけの数量が売れていて、なお高級感が維持されている、ルイ・ヴィトンのビジネスを探ってみた。

 1854年に初代ルイ・ヴィトンがパリで衣装箱を発表した。当時の貴婦人達はクジラの髭でスカートを膨らませていたそうで、形を崩さずに運ぶには特別な衣装箱が必要だった。ルイ・ヴィトンは1878年パリ万国博の旅行用衣装部門で金賞を受賞。しかし、短期間に人気を得た為に、偽物が横行するようになった。1896年二代目ジョルジュ・ヴィトンが偽物業者を訴えたが、残念ながら裁判では負けてしまった。この偽物対策として考えられたデザインが、茶褐色にLとVの文字と花模様を組み合わせた「モノグラム柄」のデザインである。ルイ・ヴィトン社のコンセプトは「旅」と「モノを包み運ぶ」である。旅行の手段が機関車から、車や飛行機に変わるとともに、木の衣装箱からトランク、鞄、物入れへと展開。イメージよりも機能を優先したデザインであったが、高貴なファンも多く、ロシア皇帝ニコライ二世、スペイン国王、モナコ大公、昭和天皇も皇太子時代に愛用した。上流階級の顧客を多く持つことで付加価値を高める、イメージ戦略も怠り無くやっていたようである。1987年ルイ・ヴィトン社とモエ・ヘネシー社の合併によりモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMHグループの持株会社)が設立された。その歴史はわずか17年という若い会社であるが、この傘下にある各企業は、それぞれが長い歴史を有し、フランス文化と伝統を具現しており、ロベエ、フェンデイ、ジパンシー、セリーヌなど、独自の付加価値ブランドを持っていることが大きな特徴である。大部分の会社が19世紀に設立されているが、シャンパンで名高いドン ペリニヨンは1743年設立のモエ・エ・シャンドン社の製品、コニャックで39%の世界シェアを持つトップブランドHennessy(ヘネシ−)は1765年の設立である。

 9月16日NIKKEI NET パリ支局発 によると『フランスの高級ブランド最大手LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが発表した1〜6月期の決算は、純利益が3億9600万ユーロ(約530億円)と前年同期比で49%増えた。営業利益率の改善と金融支出の削減が好決算につながった。営業利益は9億9600万ユーロで14%増えた。売上高は56億7800万ユーロ(約7600億円)で8%増だった』因みにLVMHの中核であるルイ・ヴィトン社の売上高の三分の一が日本だと云われている。日本人が海外で購入する分を含めると6割のユーザーが日本人とのことである。また、日本法人LV・ジャパンが1978年に設立した時の売上高は13億円、2002年が1357億円、100倍強の伸び率であり、デフレ不況下でも10年連続の増収を記録していることになる。高級ブランド感と若い女性でも少し節約すれば買える価格帯、幅広い年齢層に違和感のない茶褐色にLとVの文字を組み合わせたデザイン、それと日本では殆どの国民が中流階層意識を持っており、ルイ・ヴィトン社にとっては恰好のマーケットになっているようです。

 付加価値ブランドの代表格であるLVMHグループを今日支えている『Group Mission and Values』をLVMHのホームページより引用させて貰う。
『LVMHグループのミッションは、西洋の最も洗練された「Art de Vivre (生活術)」を世界中に発信することです。LVMHはエレガンスと創造性を自ら体現し、またグループの製品とその製品が表現する価値は、伝統と革新性をあわせ持ち、夢とファンタジーの世界を発信します。LVMHグループでは、このミッションを達成するために、次の5つのバリューを実践することが重要であると考えています。
1.クリエイティブで革新的であること ("Be creative and innovative")
2.卓越性を追求すること ("Aim for product excellence")
3.ブランドイメージを高めること ("Bolster the image of our brands with passionate determination")
4.起業家精神を持つこと ("Act as entrepreneurs")
5.常に最高を目指すこと ("Strive to be the best in all we do")』

LVMH傘下企業(LVMHのHPより)




<< echirashi.com トップページ     << ビジネスコラムバックナンバー