ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 175

☆ 父のニックネームとスラックス☆

2007.11.06号  

時計は真夜中の2時を指していた。シンプソン家の息子、アレックスと弟のレオナードは新しく開発したスラックスの商品ブランドを考えていた。20にもおよぶブランド名を考えたが、考えはまとまらなかった。兄弟は宣伝を依頼していたクロフォード・アドバダイジング・エージェンシーのウィリアム・クロフォード卿を真夜中になって訪ねた。
二人で考えたブランド名を次々と読み上げていった。彼らが父のニックネームである「DAddy」と「slacKS」を結びつけた造語の「DAKS」の名前を読み上げると、ウィリアム卿は即座に「その名前が良い。では、お休みなさい」と言って、ドアーを締めて寝室へ行ってしまった。この一言でDAKSブランドが誕生した。
それまで英国紳士のスラックスは、ベルトやサスペンダーを欠かすことができず、動作が不自由になってしまう欠点があった。1934年、ウェストに伸縮自在のゴムを付け、後に「DAKS TOP」と呼ばれる、画期的なベルトレス・スラックスが発表された。
素材や色についても、それまでのフラノ地にグレーという既成概念を破り、あらゆる素材を利用し、カラーバリエーションは50色にもおよぶスラックスを開発した。DAKSと名付けたブランドで売り出すと、大変な人気を呼び、それまで「シンプソン」ブランドで、販売していたスーツ・ジャケット・コートなどもDAKSブランドに変更して販売するようになった。

創業者であるシモン・シンプソンは、天賦の才能と確かな技術を持った、紳士服の仕立て職人であった。1894年にシモン・シンプソンは、当時の英国で衣料品取引の中心地であったミドルセックス・ストリートに、小さなテーラーを開業した。シンプソンは仕立て職人としての成功に甘んじることなく、将来を見据えて積極的に事業に取り組んでいた。最新の機械を導入し、時代に先駆けた紳士服の大量生産を目指した。1910年代後半に次男アレックスが事業に参加する頃には、シンプソン社は3000人もの職人を擁する工場を持つまでに事業を拡大した。
その後は世界で初めてのベルトレス・スラックスを考案発売したのを機に、DAKSとつけたブランド名は、英国のみならず世界的なブランドとして飛躍していった。DAKSのベルトレス・スラックスは、クリケット・テニス・ゴルフなどの花形スポーツでも、英国ナショナルチームのユニフォームに採用された。アレックスと後継者であるサミエルは共に「高品質・適正価格」の原則を掲げて守り続け、世界的に評価を得るようになった。

英国王室御用達のDAKSから、男女兼用傘のベーシックモデルが販売されている。
得意とするタータンチェックでパイピングしたシンプルなモデルである。シンプルが故に飽きのこない、ずっと持ち続けたくなるアイテムでもある。チェック柄でもカジュアル過ぎない、大人の雰囲気を持った品の良い傘である。ふっくらとした丸みのあるフォルムが硬すぎる印象を和らげており、普段着でもスーツを着てもコーディネートし易くなっている。幅広い年齢層にもフィットするのも特徴だ。手元にはゴールドのロゴがあるが、派手に見えないのが人気の秘密だ。カラーもベージュとネイビーがあり、使う場所も選ばず、何処の家庭でも一本の常備があれば大いに重宝する。夫婦がペアで色違いを持つのも楽しいお洒落かも知れない。贈答品としても大人気の逸品である。
1937年にレディス・アイテムにも進出したDAKSは、紳士服縫製工程のノウハウを生かした本格的なテーラーメイド・ジャケットやコートを中心にスカート・アクセサリーなど幅広く展開している。最近では傘・帽子・ネクタイ・セーター・バッグ・シューズ、それにハンカチ・スカーフ等の小物までラインアップしており、頭から足先までDAKSでカバーできるように、商品群が拡大されている。

1930年代、DAKSはメンズファッションに一大革命をもたらした。その後もDAKSルックはメンズファッション業界の基調となり続けた。多くのブランドが競合する業界のなかで、80年代に入ってDAKSを他のブランドと明確に差別化させたのが、ハウスチェックとタータンであり、Dモチーフだった。
DAKSチェックハウスは、世界でも最も贅沢な繊維を代表するキャメルとビキューナの色で構成されている。その後に発表された種々のタータンは、スコットランドのタータン社会にも受け入れられている。Dモチーフ(ロゴ)は、DAKSブランドのDから考案された。
DAKSでは、これまでの伝統をふまえた上で、2001年には新しいクリエイティブ・ディレクターとしてティモシー・エベレストを迎え、「DAKS E1」ブランドをスタートさせた。クラシカルでありながらモダンな新感覚のカジュアルを提唱している。
1956年にエジンバラ公、1962年にはエリザベス女王、1982年にもチャールズ皇太子よりロイヤルワラントを授与され、現在3つの王室紋章を掲げる事が許されている。




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