ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 213

☆ 人気急上昇のブギー・モンキー☆

2008.08.06号  


カジュアルバッグ・ブランド「キプリング」は、1987年にベルギーのファッション発信地であるアントワープでオープン。現在は50ヶ国以上で100店を超える店舗網に急拡大。
タウンユースのバッグをメインに展開しており、ヨーロッパのみならず、世界で人気爆発のブランドである。近年はニューヨークで誕生したブランドで、マリンスポーツ用のナイロンをヒントに開発されたバッグ「レスポートサック」が、大きな人気を獲得していた。
しかし、みんなが持っているのはチョット、というファンが「レスポの次はキプリング」と、最近は人気急上昇中である。折しも、人気女優がキプリングのバックを持って、TVドラマの主人公として放映されるや、若いママ達の支持も絶大となった。
人気拡大を裏付けているのが、雑誌の掲載記事である。最近の目に付く記事を拾ってみても、ELLE8月号(95ページ)、SAITA8月号(156ページ)、4月号(135ページ)、CLASSY8月号(291ページ)、6月号(244ページ)、SWEET5月号(300ページ)、JJ5月号(374ページ)、3月号(27ページ)、CANCAM4月号(497ページ)、美人百花3月号(123ページ)と、頻繁に取り上げられている。
軽くて丈夫なナイロンバッグは、カラーや形のバリエーションも豊富で、流行をほどよく取り入れたシンプルな使いやすさは、アクティブなライフスタイルを楽しむ人達に大人気となっている。

漫画雑誌 月間「Office YOU」(創美社発行 集英社発売)が連載し、小田ゆうあ作の人気漫画を元に、日本テレビ系列でドラマ化された「斉藤さん」が、1月9日から3月19日まで11話放映された。ストーリーは30歳代半ばにして東京郊外に家を建てた真野家と、その近所に住む住民達が織り成す、日常の生活振りを描いたもの。ドラマのキャッチコピーは「うるさかろうが、煙たかろうが、斉藤さんは正義の道を行く」である。
真野家の専業主婦である若葉(ミムラ)は、息子が以前通っていた幼稚園で、仲間はずれにされていたことで、日和見主義になっていた。そこへ「悪いことは悪いと云って、何が悪いの」と、自分の信念を貫く近所の斉藤全子(=まさこ 観月ありさ)が現れる。ドラマのタイトルにもなった斉藤全子の生き方は、自分の意見をはっきりと言い、孤立無援となっても我が道を行く孤高のタイプ。最近はKYなる言葉があって、周りの空気が読めない人は鈍い人で、空気が読めて余計なことを言わないのが、賢い人だと云う風潮になっている。しかし、周りの空気が読めていても、言うべき事を言うのも必要なことである。彼女が出てくると何を言い出すのか、ハラハラドキドキの連続になるが、己の主張を曲げない信念は、最近の事なかれ主義の風潮に反して、清々しさを覚えるドラマだった。
日本テレビのWebサイトにドラマ/バックナンバーがあり、「斉藤さん」が掲載されている。そこにはファッション・チェックというコーナーがあり、斉藤全子が毎回身につけるファッションを紹介している。第一話のファッションは、ニットジャケット(ジャージ)=ナイキ、デニムパンツ=リプレイ、バッグ=キプリングとなっている。スタイリストの角田今日子のコメントは「斉藤さんは愛情いっぱいの母親です。子供と一緒に走り回り遊びます。斉藤さんは芯のある女性です。お洒落心も忘れていません。ピンクにホワイトラインのジャージは、女性のココロをくすぐるデザインで活動的でもあります。定番のデニムはブリーチ感のあるストレートラインで、優しい感じがありながら動きやすいです。バッグはナイロン素材で、軽く斜めがけで両手が開き、やっぱり活動的! でも、カラーはレッドでジップポイントが効いています。一つ一つは何気ないアイテムですが、ちょっとだけ拘りを持ってみました」と、役柄に合わせてコーディネートしたことを書いている。
観月ありさの痛快な演技と共に、連続して第6話まで登場したキプリングのバッグが大評判となった。その後、彼女達世代の女性が、電車の中や街の中で、モンキーのマスコットが付いたバッグを、身につけている姿が急増中である。

キプリングのバッグには「ブギー・モンキー」と云われるモンキーがシンボルマークになっている。全てのバッグにはモンキーのマスコットが付いており、色の種類や表情、しぐさも多種多様で、マスコット欲しさにバッグを買うファンも多いと云われる。
ブランド名はノーベル賞作家ジョセフ・ラドヤード・キップリングに由来していると云う。
ジョセフはインドで生まれ育ち、イギリスに帰った作家・児童文学者・詩人である。1907年に41歳でノーベル文学賞を受賞したが、現在でも最年少受賞記録である。異文化のなかで育った体験を生かして書いた「ジャングル・ブック」は1894年に書かれた。この本は原作のみならず、絵本やアニメーションなど、形を変えて親しまれ、子供達の夢を育んできた。インドの密林地帯を舞台に書かれた物語は、赤ん坊の頃、オオカミの群れに紛れ込んだ少年が、熊や黒豹の深い愛情に包まれ、ジャングルの掟に従って賢く勇敢に成長し、宿敵の虎と命を賭けた戦いを制する。オオカミ一家に育てられ、やがて人間社会へ帰って行く物語は、世界中の子供達に、読み継がれている児童文学の傑作中の傑作である。
グローバル化した中で、異文化体験が身近になった今日、ジャングルを異文化社会として眺めたとき、二つの世界に身を置く人間のとまどいや悩みは、帰国子女達の悩みにも通じるものがある。ファッションの世界も含めて、現代のように多文化が行き交う時代に、ビジネス書として読んでも、これ以上相応しい古典はないであろう。

キプリングの日本での展開は、キプリング社との業務提携により、ホリプロ・グループの小売り事業部門ホリ・エンタープライズと、三井物産が共同で推進している。ホリ・エンタープライズは、小売りショップビジネスを中心に行い、時代に合った的確なマーケティングで、アクセサリー、ルーム雑貨、化粧品等さまざまな商品を取り扱っている。
キプリングのバッグは01年に上陸しており、04年にオープンした東京・青山の旗艦店を始め、ファッションをリードする全国主要都市で、個性溢れるショップを展開している。
各地で行われるイベントでは、ホリプロ所属で元バレーボール選手大林素子のトークや、マリンバ奏者のSINSKEの演奏などが盛り上げている。昨年の8月には新宿三越アルコット4階に、ショップをオープン。店舗面積は28.2坪で、店内はヨーロッパスタイルを打ち出し、モードからカジュアルまで、幅広くレイアウトされている。
ホリ・エンタープライズは、目黒区・下目黒に本社を置き、ホリプロ創業者の堀威夫が会長を努める。資本金21745万円、従業員数約300人の会社である。




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