ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 25

☆ 町おこし・地域興し☆

2004.11.23号  

 先々週のコラムで「ブランド特産品」として、全国各地にある特産物を紹介した。仕事関係の知人達にも地方から来ている人達が多く、このような話題になると、自分たちの故郷に思いを馳せるのも人情である。故郷自慢話で郷愁を追い掛けるのだ。11月20日の読売新聞朝刊に「農水産物に地名ブランド制」という記事が載っていた。小泉首相を本部長とする、政府の知的財産戦略本部は、産地を誤認させるニセ物を排除するため、来年度にも新たな認定制度を設ける方針を固めたという。水産、畜産物を含めた農産物を、地域のブランド品と認めて差別化を図り、輸出や観光資源として、全国各地の地域社会活性化に役立たせようとの狙いだ。

 政府の構想では「具体的な品質基準を設定し、ニッポンブランド(仮称)を認定する」「品質保証のため、場合によっては助成制度も設ける」との事である。さらに特許権や著作権と並ぶ知的財産権である商標権を与えるべく、商標法の見直しもはかるという。地方名を冠した農産物でも商標登録が出来るように、要件を緩和したり、不正競争防止法の罰則を強化する事も検討している。背景には品質の優れた日本産農産物の輸出が伸びる一方で、ニセモノの横行も目立っている。特許庁によると、地域名を冠した農産物は、ほかの商品と識別出来ないという理由で商標がほとんど認められていない。政府はニセモノの排除と地方の特産品などのブランド化を目的とした法的整備が必要だとしている。


 北海道の道北地方中央部に士別市という面積597平方キロ、人口2万数千人の小さな過疎の町がある。アスバラガス、ジャガイモ、トウモロコシなど美味な野菜や米などの農産物が豊富に採れるが、今ひとつメジャーになれない街であった。しかし、ここに起伏のある丘陵の地形を活かした町おこしの例が有った。「合宿の里 士別」毎年実業団や大学のアスリート達、約2万人が合宿に訪れるのだ。この地は東京オリンピックのレスリング金メダリスト渡辺長武やボクシング世界チャンピオンの輪島功一らを輩出した、スポーツに対する潜在的意識の高い地域だった。これに着目した呉服業を営む今井忠則が、今から40年位前から「スポーツによる人づくり」を中高生対象に行った。当時も世界最強であった中国卓球チームを招き日中交歓卓球試合や国体のウェイトリフティング試合会場の誘致などを行い、市民のスポーツに対する意識を顕在化し、「スポーツによる町づくり」へとつなげていった。現在では今井の門下生達が市の行政や体育協会の中枢となり、「合宿の里」をボランティアで支えている。ここを訪れるアスリート達は箱根駅伝や世界選手権、オリンピックなどに出場する日本の一流選手達が数多くいる。そのため新聞やテレビなどの報道関係者達も多く滞在することになる。夏には一般の人達はホテルの予約も取れない状態だ。経済波及効果はホテルや合宿施設、飲食店はもちろんのこと。そこに食材や必需品を供給する業者、競技場をメンテナンスする業者なども潤い、町全体に活気を与えている。今では施設も整い各団体から「合宿の里」としてリージョナルなブランドイメージが定着している。メジャーになれなかった農産物も、訪れるアスリート達や報道陣の口コミで徐々に評価されるようになり、産直ビジネスも芽生えだした。ちなみに士別市と隣の朝日町の教育委員会が 10月20日に発表した、今年 4月から 9月末迄に両市町で行われた各種スポーツ大会や合宿に参加した延人数は 345団体、21.574人との事である。 昭和54年 大分県に平松守彦知事が誕生した。通産官僚であった知事は「大分県各地で全国に誇れるような特産品を作ろう」と呼びかけた。各市町村長との話し合いの席で、自分がセールスマンとなって全国に宣伝する事を約束した。こうして始まったのが「一村一品運動」による各地の特産品のブランド化だった。県民の理解を得るため「町づくり懇談会―知事とふるさとを語ろう」を開き、県内を精力的に回った。県提供のテレビ番組を市町村に無料で解放し、「ふるさと自慢の一品」の番組を自主制作する企画も始めた。徐々にヒット商品も生まれ、県民は一生懸命やれば全国的に有名になり、地域に誇りが持てる事を実感したという。士別市の「合宿の里」や大分県の「一村一品運動」も、それらの活動を支え育てて行くのは地域の人々です。このような活動をきっかけに地域をより活性化していく為には、人を育てて行くことと、育てる指導者の存在が大きいことを感じます。人起こしは町興しに通ずるって事でしょうね。

 先々週のコラムに書ききれなかった、村おこし町おこしとなっている、地方名を冠したリージョナル・ブランドを追記しておきます。北海道「厚岸のカキ」、青森県「津軽塗」、岩手県「南部鉄瓶」「三陸ワカメ」、秋田県「稲庭のうどん」「大館の比内地鶏」、山形県「天童の将棋駒」「米沢牛」、宮城県「石巻のササカマボコ」、福島県「喜多方ラーメン」、茨城県「猿島茶」、長野県「小布施の栗」、群馬県「下仁田のネギ」、埼玉県「狭山茶」、神奈川県「箱根の寄せ木細工」「小田原の蒲鉾」、東京都「練馬の江戸刺繍」、山梨県「勝沼町のワイン」、石川県「輪島塗」「加賀太のきゅうり」、岐阜県「美濃焼」、愛知県「名古屋コーチン」「岡崎の八丁味噌」、京都「宇治茶」「西陣織り」、和歌山県「紀州備長炭」、岡山県「備前焼」、山口県「下関の平家ガニ」、四国「高知の土佐節」「徳島のすだち」「愛媛のみかん」「香川の讃岐うどん」、九州「宮崎の椎茸」、「長崎チャンポン」、「鹿児島の黒豚」、「大分県豊後高田の豊後牛」、「佐賀県伊万里の伊万里焼き」、沖縄県「名護の琉球藍染め」等々。


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