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銚子市は関東平野の最東端に位置し、北は利根川、東と南は太平洋に面しており、海洋性の温暖な気候である。本来、銚子とは地名を指すものではなく、利根川の河口を指すもので銚子口と云われていた。酒器の一種である銚子は、入り口が狭く中に入ると広がる形状が、地形に良く似ていることから地名になったとされる。行政区画名として町名に使われるようになったのは、1889年の市制町村制が施行されてからである。江戸時代には利根川や江戸川水運が開発され、醤油醸造業と漁業で発展した。年間を通して比較的風が強く、現在では34基の発電用風車が稼働している。親潮と黒潮が沖合で交わり、温暖多湿で夏冬の気温差が少ない気候は、醤油造りには欠かせない麹菌や酵母などの微生物の成育に適している。現在のように様々な醸造設備が無く、自然な環境で醸造していた時代は、銚子の気候条件は、醤油醸造に大きな便宜をもたらした。また、気候だけでなく地理的条件においても、大消費地の江戸には江戸川を利用して製品を運び、原料についても利根川を利用して常陸の大豆や小麦を入手しやすい位置にあった。江戸時代の初期は、江戸で消費される醤油の殆どが、関西からの「下りもの」であった。1616年、下総の国・銚子の豪農であった第三代田中玄蕃が、摂津の国(現・兵庫県)・西宮の酒造家の真宜九郎右衛門の勧めで醤油醸造を始めた。現在のヒゲタ醤油の創業で、関東最古の醤油業である。当時の醤油は「大極上々溜まり醤油」と称していて、大豆が主体の「味噌溜まり」の様なものであったと云われる。1697年に第五代田中玄蕃が醸造法を改良して、江戸の食味に合う関東風醤油を醸造。原料に小麦を配合するなど、「甘辛い」「香りの良い」味は、現在の濃い口醤油の原型となり、江戸時代後期には江戸で消費される醤油の大部分が関東産の醤油となる先鞭をつけた。1905年に濱口吉兵衛は、本家でもある兄の第九代濱口吉右衛門から分家して醤油醸造を始めた。その後兄の吉右衛門も販売部門に参加して、次第に会社の中枢を担うようになった。1914年になり濱口家と田中家(第十二代及び第十三代の田中玄蕃)、深井家(�豌鮎潴�)が合同して「銚子醤油合資会社」を設立し、社長に第十二代田中玄蕃が就任。1918年なり株式会社に組織変更して初代社長には濱口吉兵衛が就任した。古文書によると同社のマークは、元々は創業者である田中家の家紋であったが、元禄年間の頃の当主が描き直した時に、田の字の隅に墨が滴って線の様に見えたので、面白がって四隅に同じ線を入れたら、仙人のヒゲのように見えたことから、「髭つきの田」つまり「髭田=ヒゲタ」となったと云われる。左上の「上」は江戸時代末期に、幕府より最上の醤油7銘柄の一つにお墨付きを賜ったことからつけられた。1976年に現社名の「ヒゲタ醤油」となった。野田の茂木家(現・キッコーマン醤油)とは提携関係にある。
1645年、濱口儀兵衛が「廣屋儀兵衛商店」を創業した。儀兵衛は初代濱口吉右衛門の弟である。当時は江戸と上方を結ぶ重要な海上航路に、房州(現・千葉県)と紀州(現・和歌山県)を結ぶ海路があった。御三家の一つ紀州徳川家は、早くからこの海路を使って江戸との間で交易を行っていた。儀兵衛は醤油発祥の地である紀州・湯浅(現・湯浅町)の直ぐ近くにある廣村(現・広川町)の出身。儀兵衛は銚子の風土に惹かれ、出身地を屋号にして醤油造りを始めた。開業するにあたり「山笠にキ」の暖簾を考えたが、紀州徳川家の船印と同じだったため、キを横向きにしたところサと読めたことからヤマサとした。右上についている「上」の字は1864年に、幕府より最上の醤油7銘柄の一つにお墨付きを賜ったことからつけられた。この年に幕府は物価統制令を発したが、幕府から高い品質を保証されたことにより「値を下げるに及ばず」とのお墨付きを得た。1885年に国産ソース第一号ミカドソースを開発。1895年に関東で最初の宮内庁御用達となる。1928年に株式会社設立に伴い現社名に変更。その後は鰹節のうまみ成分イノシン酸、椎茸のうまみ成分グアニル酸を工業的に生産することに初めて成功。「コンブつゆ」「昆布ポン酢」などの調味料分野にも進出。現在はこのバイオ技術を応用して、医薬品や研究試薬品などの事業領域にも進出。ヤマサの当主は代々濱口家が踏襲しており、現在の社長は第十二代濱口道雄である。
『警部補・菊池正明は多摩川に浮いた女性死体の捜査にあたっている最中、チンピラの花井に嵌められ、麻薬運搬に手を貸したとして逮捕される。浪費癖のある内妻の恵美子は花井から小遣いを渡されていた。小菅刑務所で2年間を過ごして出所した日に、刑務所で牢名主を気取っていたスリの蟹平が、仕事しているのを見かけ獲物を取り上げる。菊池はその足で、元同僚の老刑事・松野が勤める興信所に就職。貰った名刺には稲村清一と書かれてあり、所長から高沢光江の素行調査を命ぜられた。光江は高沢コンツェルンの二代目会長・重治の妻であり、政界の実力者・海老原寛の娘であった。数日後、興信所にある新聞記事が目に留まった。「犬吠埼の旅館で若い女性が睡眠薬自殺を図ったが一命は取り留めた」とあり、住所、氏名、年齢が記されていた。稲村はポケットに入れたままの蟹平の獲物を取りだしてみた。そして稲村は浅井節子へ手紙を出した。「国電の中で定期券を拾いました。東京駅の遺失物係へ提出しておきました」と。そして節子からは礼に5足の靴下が送られてきた。稲村は興信所から命ぜられた仕事とは別に、自らを罪に陥れた相手への復讐の捜査を内々に進めていた。そして、その靴下を履き潰すまでには、自分の復讐を遂げることを誓った。ある日、稲村は自動車免許を取るために教習所へ行った折、順番待ちのアナウンスが「浅井節子」を呼び出していた。偶然にも出会った二人は、互いに暗い過去を持つ身、近所の食堂で夕食を共にするようになる。稲村は刑事時代に知り合った自動車修理屋から、再生車を貰うことになり、それを節子にプレゼントする。二人は再生車に乗り、九十九里浜へドライブに出掛け、互いの過去を話すことになった。節子は薄痴の幼な友達・艶子を誤って殺したことを告白。稲村も復讐の捜査の進捗を話した。節子は稲村を不憫に思い重要なヒントを与えてくれた。高沢重治がR工業の社長時代に日進商事の柴田社長と闇取引で業績を上げていたこと。初代会長高沢重光を殺害し、自分がコンツェルンの会長になったこと。稲村自身の調査と繋ぎ合わせて整理すると、別々に追いかけていた事件の接点が見つかった。多摩川の殺人事件は日進商事の江口専務、柴田社長に辿り着く。稲村が逮捕された事件はチンピラの花井から湯浅組の若頭・大倉健次、そこから政界を目指している親分の湯浅貞造へ、代議士の吉野達男や永井勝一を通じて海老原寛につながる。一方、柴田社長は高沢重治から高沢光江につながり、海老原寛に辿り着く。興信所に命ぜられた高沢光江の素行調査は、依頼主は光江が柴田を探していると推測され、3つのルートの鍵を握るのは重治と柴田であることを確信する。稲村は恵美子を利用して湯浅貞造を締め上げ、吉野達男に頼まれて一人の刑事を陥れたことを白状させる。そして、稲村も光江と柴田が接触するのを追いかけた。東北の浅虫温泉や、出雲の玉造温泉へ飛んだ。聞き込みの中で柴田らしき人物が現れていること、外国旅行から帰ってきたような荷物だったことも聞き出した。足取りの途絶えた柴田のトランクが秋吉台の最寄り駅に、一時預かりのまま放置されているのが判明。稲村は秋吉台のドリーネを捜索することにし、ついに柴田の死体を発見。そして、重治に「秋吉台一帯が野焼きされる」との手紙を書き、重治が現れるのをドリーネの中で待った。数日後、ドリーネの中に人の気配がして死体を切り刻む音がする。それを見た稲村は驚愕する。それは互いに人生をやり直そうとした節子であった。東京へ帰る夜汽車の中、節子への尋問が始まった。柴田と重治が重光を殺したとき、殺害現場を専務の江口に写真を撮らせ、それをネタに柴田が重治を脅迫していたこと。節子は重治の愛人で柴田殺しを頼まれ、艶子と実行したこと。口止めに艶子を殺したこと。そして、犬吠埼での自殺未遂の理由は二人を殺したことなど。刑事が容疑者に尋問するのと同じだった。東京へ戻った二人は、九十九へ里の浜辺へ出かけ、節子は睡眠薬を多量に入れた魔法瓶の液体を口にした。稲村の節子に対する復讐であった。稲村は重治の所にも日参し、江口が撮った写真のネガで脅迫。重治はノイローゼとなり、首つり自殺をしてしまう。復讐が終わった稲村は、久しぶりに松野のところに顔を出すが、松野は最悪の機嫌だった。6年間も相方として捜査にあたった元老刑事は稲村の復讐劇を全て見通していた。「小菅を出てきた時には、君の体は綺麗だった。」「今では背中にまでベッタリと貼り付けてある。悪の紋章がね。」稲村はのっそりと立ち上がり「それじゃ、お元気で。」』
橋本忍原作「悪の紋章」のあらすじである。1964年公開された東宝映画では、山崎努と新珠三千代が主演。翌年の秋NET系列でテレビ放映されたときには、天知茂と愛京子が主演した。ともに節子が柴田の死体を刻むシーンは衝撃的であった。橋本忍は「羅生門」「七人の侍」「ゼロの焦点」「砂の器」「八甲田山」「私は貝になりたい」など多くのヒット作品の脚本を書いたが、数少ない原作の一つである。
銚子には日本随一の漁獲量を誇る漁港がある。しかし、これだけの漁港を造った先人達の苦労が、並大抵では無かった歴史も忘れてはならない。利根川の河口近くに千人塚という場所がある。1614年に銚子沖に大津波が襲来し、鹿島灘に出漁中の漁船が被害を受け1000人以上の溺死者がでて、この漁民を埋葬した場所とされている。1910年には漁船80隻、漁民1000人以上が遭難した。当時の利根川河口は川幅が狭く、川底には大きな岩が無数にあり、水深が浅くて干潮時と満潮時の潮の流れは急で、一年中強い風が吹き荒い波が立っていた。何度も遭難が繰り返される中、銚子市民から河口改修の要望が持ち上がる。町の有力者達は銚子醤油社長の濱口吉兵衛を担ぎ出し、千葉県水産の社長に迎え入れ、安全な港に改修すべく県や国に訴えて貰うことにした。県や国が調査して対策を立てるが、遅々として進まず効果が上がることは無かった。吉兵衛は悩んだ末に国へこの実情を訴え、漁民を危険な状況から救うため、国会議員になることを決意。1920年に国会議員となった吉兵衛(二期8年勤める)は、県会議員の小野田周齋と共に銚子漁港改修に全力を注ぎ、国庫補助による県営工事を実現させる。1925年に着工して1932年に竣工。1937年には吉兵衛の功績を讃えて、新生河岸公園に銅像が建立されたが、1943年に戦時供出され、1955年に再建された。現在(2009年)の銚子漁港は年間水揚げ量22万3739トンで全国一。年間水揚げ金額233億7089万円で第六位、国内屈指の漁港となっている。
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