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桃太郎のビジネスコラム 340

☆ 首都圏第3の空港☆

2011.02.02号  

 首都圏で羽田空港や成田空港に次ぐ第3の空港である茨城空港が、2010年3月11日に開港。午前8時に新設されたターミナルビルで県知事、県会議長、小美玉市長らによるテープカットが行なわれてオープンした。一番機は神戸空港8時20分発のスカイマーク・エアラインズ社の、開港記念フライトが9時30分過ぎに着陸。機体整備を終えた10時30分過ぎに初搭乗の客を乗せて、再び神戸空港に向けて茨城空港を飛び立った。定期便のアシアナ航空第1便は正午に到着し、午後1時過ぎにほぼ満席(166名)の乗客を乗せて、韓国仁川に向けて出発。それぞれの便が出発・到着する際には、テープカットや花束贈呈などのセレモニーが行なわれ、大洗高校マーチングバンド部の演奏で盛り上げた。当日は8000人の見物客も押し寄せ、大いに盛り上がったオープニングディとなった。しかし、開港後5ヶ月にも満たない7月初旬に、国内唯一の定期便だったスカイマーク社が9月より運休すると発表。運休の理由についてスカイマーク社は、茨城空港と共用する航空自衛隊百里基地で、7月25日に開催される「航空祭」当日の、ダイヤ変更を求められたことや、百里基地で行なわれる訓練などで、成田空港への変更が指示される事を挙げた。スカイマーク社については茨城空港を所轄する国土交通省が、防衛省との折衝の上、10月より就航再開することで結着。そうした経緯を経て、現在は中国・上海との間が片道最安値4000円の格安チャーター便も就航した。しかし、春秋航空のチャーター便は、国交省の運航許可が1ヶ月ごとに必要で、航空券の予約は1ヶ月先までしかできなかった。国交省は地元や春秋航空に配慮し、防衛省と協議のうえ2ヶ月先までの運航許可を出すようになったことで、中国・春秋航空の予約も2ヶ月先まで可能になった。

 アジア地域を中心とした格安航空会社(LCC)が、一堂に会する国際会議が1月26日にシンガポールで開催した。会議は「ローコストエアラインズ・ワールド・アジアパシフィック2011」と銘打たれ、28日まで開催された。民間主催でアジア太平洋地域を中心に、60社ほどのLCC関係者が参加。講演会なども開かれ、LCCの収益拡大に向けた今後の在り方が討論された。春秋航空に次ぐ国際路線獲得を目指す茨城県は、この会議を絶好の商談場所ととらえ、会場に「イバラキエアポート」のブースを設け、英語版のパンフレットも用意。日本初のLCC対応空港として、茨城空港の売り込みに全力を挙げている。会議場には羽田空港の再国際化に対抗する成田空港も参加し、誘致合戦を繰り広げる。茨城空港は搭乗橋も無いなどターミナル設備も簡素化しているが、成田空港に比べ着陸料が40%も安く、その分だけ乗り入れ時のコスト削減が可能なことや、成田が混雑する時間帯でも発着可能なことなど、成田空港に対するライバル心むき出しでアピール。国内向けPRでも平地に12000台収容の、無料駐車場が完備されていることを強調。都内から高速道路を使用すれば、成田空港まで約70分、茨城空港までは約100分の時間である。成田空港の駐車場は1日約1500円程度かかり、東関東自動車道は京葉道路との分岐地点まで渋滞することも多い。それに比べ常磐自動車道はシーズンでも渋滞が少ない。100分程度のドライブなら疲れも感じない時間で、都内では見られない田園風景を見ながらの、ちょっとした旅感も味わえる。それに、ターミナルビルが小さいので、ビル内で戸惑うことも少ない。子供を連れて3泊4日で田舎へ帰省するような場合、30分の違いに駐車場の価格と入出庫の煩わしさ、それにターミナルビル内の分かり易さを考えたら、以外と狙い目かも知れない。

 百里基地は茨城県小美玉市にある航空自衛隊の基地である。埼玉県にある入間基地は地域周辺との協定により、戦闘機の運用ができないことから、関東地方で唯一(離島は除く)航空自衛隊の戦闘機運用が可能な基地となっている。因って、首都圏防空の要として位置づけられている。飛行群は第7航空団と偵察航空隊が駐屯しており、基地司令は第7航空団司令が兼務している。第7航空団は中部航空方面隊隷下にあり、戦闘機部隊の主任務は首都圏内の防空で、二個飛行隊が対領空侵犯処置任務を実施している。第302飛行隊(F-4EJ改、T-4)と、第305飛行隊(F-15J/DJ、T-4)が配置されている。偵察航空隊は航空総隊の直轄にあり、航空自衛隊唯一の偵察部隊である。第501飛行隊(RF-4E、RF-4EJ)が配置されている。誘導路は基地反対派からの用地買収が出来ず、国内では珍しい「くの字」型となっている。他の基地では戦闘時に滑走路が破壊された場合、誘導路からの離陸を想定しているが、百里基地では不可能である。反対派が基地内に所有する飛び地には、平和公園や平和農園、百里稲荷神社などがある。樹木には「自衛隊は憲法違反」と記された巨大看板もあり、管制塔から滑走路端への視界を妨げている。自衛隊の大型行事として陸上自衛隊の「中央観閲式」や、海上自衛隊の「観艦式」、それに航空自衛隊の「航空観閲式」がある。百里基地では航空観閲式を1966年から3年おきに開催し、招待者のみが参加できる。航空観閲式が行なわれない年度は、百里基地航空祭という名称の「航空祭」が開催され、各種の航空兵器も数多く展示される。毎年のように展示がおこなわれるものは、F-15JとFR-4によるスクランブルデモと高機動飛行、F-2による低空飛行と高機動飛行、ブルーインパルスによるアクロバット飛行、UH-60Jによる乗員の降下、U-125の旋回飛行による救難訓練など、各種展示機の飛行が行なわれる。ブルーインパルスによるアクロバット飛行は、テレビニュースでも報道されることがある。民間アクロバット飛行チームのエアロックを主催するロック岩崎氏が、在官中最後に所属した基地でもある。

 百里基地は首都圏防衛の要と位置づけられており、共用する茨城空港では共産圏からの飛行機乗り入れには、防衛省が慎重な姿勢をとっている。昨年の10月までは訓練と重なることを背景に、一部の便は成田空港への発着変更を余儀なくされていた。因みに、航空自衛隊の基地と民間空港が共用している飛行場は、北海道・千歳空港、青森県・三沢空港、鳥取県・米子空港や、かつての名古屋・小牧空港などもあり、自衛隊の訓練によって民間空港の運営に支障を来すことはなかった。百里基地と共用する茨城空港は、それだけ防衛省は首都圏の防空に神経を尖らせている事を意味する。こうした中で、安定した収益を得たい春秋航空と、茨城空港の利用客を増やしたい県が、国交省や防衛省に利便性への配慮を強く要請。昨年11月には全便の発着が実現し、今年2月からは2ヶ月ごとに運航許可が出されることになった。上海便の搭乗率は沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事故で、一時的に落ち込んだが、日本の正月に当たる春節(2月3日)を前に、再び予約率が上向いている。春秋航空はチャーター便としての運航だったため、アクセスの悪さが課題だったが、関東鉄道が茨城空港と東京駅を結ぶ高速バスのダイヤを変更。昨年12月初旬までは午後1時10分発が最終だったため、上海から午後0時55分に到着する便の乗客は、事実上利用できなかった。高速バスはダイヤ変更で午後2時10分発となり、上海便のある日はほぼ満席の状態となった。利用客の利便性を向上させたことで、チャーター便が定期就航になることも近いようだ。現在、国内定期便はスカイマークの神戸便のみだが、2月からは名古屋便、新千歳便が加わる。国際線はアシアナ航空が韓国・仁川空港発着でソウル便を毎日運航している。仁川空港はアジア随一のハブ空港と云われ、世界各国への乗り継ぎが便利で、多くのツアー客に利用されている。これに上海便が定期運航されれば、茨城空港や県の発展に一層弾みがつくことになる。


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