ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 36

☆ ファッション・エキスプレス☆

2005.02.08号  

 横浜市中区には横浜を象徴するスポットがいくつもある。車で国道16号線を横浜駅から桜木町駅を過ぎて左に折れて「県立歴史博物館」を過ぎてから右折すると左手に「神奈川県庁」「開港資料館」「県民ホール」がある。右側には「開港記念会館」や「新聞博物館」があり、その奥の「横浜公園」には「横浜スタジアム」がある。もう少し走ると右手に「ローズホテル」があり、「横浜中華街」の入り口がある。左側に平行して走っている道路には「山下公園」があり、左側の海には「氷川丸」が浮かび、右側には老舗の「ニューグランドホテル」や「マリンタワー」「人形の家」が立ち並ぶ。来た道をさらに川を渡って進むと元町があり、丘をあがっていくと「外人墓地」や「港の見える丘公園」へとつながる。公園には「大佛次郎記念館」や「神奈川近代文学館」「岩崎博物館」等がある。そのまま丘の尾根つたいに走れば「三渓園」を経て根岸へとぬける。
 中区には「港へつづく散歩みち」として有名なショッピング・ロード伊勢佐木町と並びファション街の元町がある。このあたりは江戸時代には横浜村と云い半農半魚の生活を送っている人達が多かった。1858年日本が初めて外国と結んだ日米修好通商条約により横浜が開港され、現在の山下町付近が外国人居留地となった。そのため村人達は追い出されるように山裾へ移住することになった。その後に市街地となった横浜町に対し、「もともとの横浜村」が元村から「元町」になったと云われている。慶応3年に山手にも外国人の居留地ができるようになると、元町通りが山手の住宅地と関内の商館をつなぐ道となり、外国人相手の商店も増え、次第に元町はエキゾチックな通りになっていった。1970年代後半には「ハマトラ・ブーム」があり、ファションの街として全国的に知られるようになった。「ハマトラ」とは「ヨコハマ・トラディショナル」の略で、女性向けファション雑誌が横浜の伝統的なお嬢様ファションを取り上げて全国的な大ブームとなった。山手にあるフェリス女学院やサンモールの女子学生が身につけていたカジュアル・ファションで、一般の流行に左右されないスタイルとして定着し、母娘で同じ店で買い物をする光景も多々有るそうだ。「フクゾー」のベストやカーディガン、ハイソックス。「ミハマ」の靴。そして「キタムラ」のバックは必須アイテムで、「元町発の全国ブランド」となっていった。2004年2月1日、元町・中華街駅から四つの駅を通過して横浜駅迄の全長4.1Kmが開通した。五つの駅は前述した横浜の個性的エリアの中心地である。横浜駅で東急東横線と相互乗り入れする事で、浜のファション街の元町から東京渋谷のファション街までわずか 35分のファション・エキスプレスが誕生した。 
 日経プラスワンの何でもランキング「主婦が喜ぶ、使ってみたいバック>」(02年5月調査)によると上位3つはルイ・ヴィトン、プラダ、エルメスの順であった。既号にも書いたように圧倒的人気のヴィトンのバックは「プラダの上でエルメスの前」と云われる。ヴィトンのバックはプラダのバックより価格もブランド力も上だが、エルメスのバックを使うには経済力も年齢的にもまだ早いとの事。コーチ、グッチと続きキタムラのバックは6位となっている。日本製バックとしては最高のブランド評価である。キタムラはみなとみらい線 元町・中華街駅から元町ストリートを歩き、一丁目右側と二丁目左側に「キタムラK2」があり、三丁目左側に「元町メンズショップ」「グッズショップ」「シューズショップ」があり、四丁目中程左側の「ルイ・ヴィトン横浜元町店」の斜前に「キタムラ元町本店」がある。キタムラは1882年元町通りに「キタムラ商店」として創業、きんちゃく袋など和装小物を販売し、その後海外製品の輸入販売もしていた。52年に法人となり、「機能やデザインにこだわったバックを自分たちで創りたい」として、最初に販売したのが紺色のバックだった。一般的な黒や茶ではなく売れ行きは良くなかったが、「デザイン、素材、色、機能、価格」に拘り続ける事で消費者に認められるようになった。「k」のマークの独自ブランドのバックは72年に発売した。69年11月に玉川高島屋SC店を開店、そして89年に名古屋パルコに出店したのを機に有名デパートやファションビルへの出店が加速した。現在ではミラノにもオフィスを構えており「元町発の世界ブランド」へ飛翔つづけている。
 元町は街そのものが地名としてブランド化している。Webサイトを見ると「モトマチの街つくり」に見てとれる(http://www.motomachi.or.jp/)。02年7月に元町商店街の若手経営者達が、元町のコミュニティ・アイデンティテイ(CI)プロジェクト・チームを発足させた。よりよい街づくりを目指すため、元町商店街の良い点、継続すべき点、改善すべき点を徹底的に議論した。元町として誇れる事は「歴史、伝統のある街」「青空の下でショッピングが楽しめる街」として繁栄してきた。CIでは世界最大規模のプランディング&デザインのコンサルタンシーであるランドーアソシエーツに協力を依頼した。新しいブランド・コンセプトは「変わらない想い」「変わっていくストーリー」として「お客様への思いはそのままに」「時代に合った変化する柔軟性」をコンセプトとして掲げている。新しいブランド・マークも「伝統と格式」「顧客との信頼関係」「地域環境の良さ」「新しいものへのチャレンジ精神」を表現して制定した。多くの商店街と比較すると時代の流れに即した変革は、まさにエキスプレスのスピードだ。恒例になった元町商店街「チャーミング・セール」が 2月22日から 27日に開催される。年に 2回催されるバーゲンセールには、目が血走ったおばさま族が身動き出来ないほど大勢押し掛け、メイン・ストリートは買い物客でごった返す賑やかさだと云う。みなとみらい地区の再開発や新駅誕生で集客インフラも整った横浜・元町は街づくり、商店街のブランド化に最も成功した例ではないだろうか。


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