ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 37

☆ ブランドとは「信頼」☆

2005.02.15号  

 「ブランドは社会からの信頼の証経営の質が価値に大きく影響する。」「メイド・バイ・キャノンのようなブランド名が高性能、高品質の証となり、競争を勝ち抜く武器に成り得る。」キャノンの御手洗社長の言葉である今回は日本経済新聞の記事などを参考に大田区発の世界ブランドであるキャノンをとりあげてみた。
現在は企業理念や企業文化なども含めた企業行動全体が企業イメージをつくり、コーポレートブランドを形成するようになった。消費者や株主なども企業行動を見つめるようになり、情報化社会にあっては世界中のどこからでも、誰でもが企業情報を知り得ることができるようになった。因って企業側からすると経営の透明性や説明責任もコーポレートブランド創りに影響するようになってきた。
昔は海外で土産を買って帰国して見たら「メイド・イン・ジャパン」と書いてあったという話があった。国の品質レベルが高品質の証であった時代がある。今の時代は先に個々のコーポレートブランドがあり、その次に販売製品の商品ブランドがある。信頼の証であるブランドは日々の地道な活動の積み重ねであり一朝一夕には出来ない。しかし、本コラムでも何度か取り上げたように、不祥事を起こせば過去から築き上げてきた蓄積が一夕にして崩壊してしまうのもコーポレートブランドである。


 日本経済新聞社と日経産業消費研究所が実施した「第17回 日経企業イメージ調査」によるとキャノンはビジネスマンが考える将来性を感じさせる企業の第2位になっている。
ちなみに第一位はトヨタ自動車、第3位はホンダであった。
御手洗社長は「キャノンは真のグローバルエクセレントカンパニーを目指している。キャノンにとってブランドマネジメントは経営そのものであると思っている。キャノンというブランドは創業以来60有余年にわたって積み重ねてきた信頼という財産の結晶であり、
働く者の誇りでもある」「特許などの知的財産が企業の競争力を左右する大きな財産であり、企業ブランドを形成しているものの一つで有ると思う」「企業理念に掲げている共生という事は、文化、習慣、言語、民族などの違いを問わず、全ての人類が末永く共に生き、幸せに暮らしていける社会を築くことに貢献しようという事だ」「イノベーションと共生の理念を基軸にした経営を進める事が、世界でも有数のコーポレートブランドを構築することに繋がると確信している。」と語る。

 キャノンのイノベーションの源泉を探ってみた。 1993年から 2002年におけるアメリカでの特許登録件数のランキングがある。94年から98年と02年は米IBMに次いで二位である。93年、99から01年は三位の実績である。87年には特許出願件数でIBMを押さえてトップについた事もあった。
 売上高に対して研究開発費用は 12%から 13%を投じており、御手洗社長は「あの会社は特許を山ほど持っている。となると、消費者はその会社のオリジナリティを感じてくれるし、独自技術も認めてくれる。イノベーションをたゆみなく続けていくことが、製品のブランドはもちろん、コーポレートブランドの価値向上にも繋がる。」と語る。
 04年10月に次世代薄型ディスプレイ「SDE」パネルを開発、生産、販売する合弁会社を東芝と設立した。キャノンが86年から研究してきた独自技術と東芝のブラウン管や液晶・半導体技術を結集した。高輝度、高精細、高い動画追従性、高コントラスト、階調数の多さなど総合画質に優れ低消費電力の特性を持つと云う。05年に生産を開始する。
 キャノンの高収益は生産現場の革新からももたらされている。フォードが大量生産方式として考え出したベルトコンベアー方式の生産は、生産する品種によっては時代の変遷によって現代では合わない場合がある。
作業者は始めのうちはコンベアーの速度に追いつくのが大変だが、数ヶ月もすると慣れてしまう。しかし、生産性を上げる為にコンベアーの速度を上げると労働強化と受け取られてしまう。コンベアー方式はチームワークを重視するので、何時しか作業の遅い作業者の速度になってしまい、能力のある作業者の生産性を阻害してしまうことになる。それにコンベアーの上には常に半製品が載っているので仕掛かり在庫が増え、結果として資金効率までも悪化することになる。
製造業において座り作業と立ち作業では生産性が3割違うと云われている。座り作業ではどうしても下半身の動作が緩慢で上半身のみの狭い作業範囲となり生産性が低下する。
キャノンではセル方式という、作業員が立ち作業で全ての工程を一人で消化する生産方式を導入した。これにより作業員の能力に応じた生産ができ、作業員の能力評価も一目瞭然となることで、作業員の意識改革にもつながっていった。
 セル方式への転換により内外28工場の18000メートルのコンベアーを廃棄し、部品、仕掛かり品、完成品在庫等の削減とそれに伴うスペースコストの削減。生産性向上による労務費の削減などにより工場の運転資金が三分の一に激減したという。
この改革は生産量に合わせた部品調達とジャストイン、人員の配置、販売部門への出荷時期調整など、生産現場だけでなく他部門とのITを駆使した連携が必須となっている。
改革の結果キャシュフローが劇的に改善しており、98年には225億円の赤字が 00年には1338億円の黒字となった。

 2月28日に発表された04年12月期決算は売上高が前期比 8.4%増の 3兆4679億円、税引後利益が24.5%増の3433億円と5年連続の増収増益と過去最高益の更新を達成した。
独自技術に強みのある事業の選択とその事業に経営資本を集中する手法が効果を上げた
デジタルカメラやビームプリンターか好調で、マーケットが縮小しているコンパク型や一眼レフカメラでもヒット商品を出し販売台数は前期比6割以上も増加した。
手元にある94年からの決算資料によると、99年に売上高、経常利益、税引後利益とも前期比で落ち込んだが、それ以外は各々前期比で増収増益となっている。00年においても98年の決算を各々上回っている。
05年12月期の見通しは売上高が前期比4.7%増の3兆6300億円、税引後利益が4.6%増の3590億円と6年連続の増収増益と過去最高益の更新が続く見通し。
最後に御手洗社長の言葉をもう一つ。「ブランドとは信頼である。製品だけでなく、会社そのものの信頼性が重要である。企業理念遵法性企業統治など経営そのものがブランド価値に影響する。イノベーションを積み重ね、企業の社会的責任を全うする企業活動をすることが、コーポレートブランド創りにつながる。




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