ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 39

☆ コクヨのヨコク☆

2005.03.01号  

 「コクヨのヨコク・・コクヨだよ」テレビCMによく出てくる言葉です。そしてWebサイトを開くと「コクヨのヨコク・・2005年10月コクヨは創業100周年を迎えます。」
日本には大小合わせて約160万社の企業が有ると云われる。その中で100年以上の歴史を持つ企業は約1万5000社で1%にも満たない数だ。
1905年創業者 黒田善太郎が27才の時、大阪西区に和式帳簿の表紙を造る「黒田表紙店」を開業する。14年「黒田国光堂」と改称。49年「株式会社 黒田国光堂」に改組し、黒田善太郎が初代社長に就任する。61年に現社名の「コクヨ株式会社」に社名変更する。
89年には創業者善太郎の孫にあたる章裕が四代目社長に就任。事務用品全般からオフィス家具、通信販売の子会社カウネットなど業容を拡大している。


 創業当初は昔の大福帳などの表紙だけを問屋から請け負う隙間ビジネスだった。善太郎は「人に役立つ事をしていれば、必ず受け入れられる」との信念で事業に打ち込み、創業
3年目には下請け仕事から製造発売元につながる帳簿と表紙の一貫生産をするようになった。
改善改良を重ねることで次第に市場でも認知されるようになった。
大正時代になり税務署が洋式簿記の導入促進を進めたこともあり、現在の家計簿のような単式簿記や企業会計に用いられる複式簿記の帳簿が普及し始めた。その後は納品伝票、仕切り書、便箋、複写簿などを販売し紙製品メーカーとして成長していく。
17年には商標を「国誉=コクヨ」と制定した。 創業者の掲げた「良品廉価」への努力が報われ、近畿地区を中心に西日本一帯に販路が広がっていった。東日本の市場、とりわけ東京への販路開拓では難航したが、23年関東大震災で事態が一変した。東京は壊滅的打撃を受け悪徳商法も跋扈したが、善太郎は「不幸に見舞われた人達の弱みにつけ込むような事はしてはならない」と厳命した反対に品質を維持しつつも価格を押さえたことによって
東京の問屋から絶大な信頼を得る事となった。これを機に東京の12軒の卸問屋は「東京国誉会」というコクヨ製品を扱うブランド・サポーター的組織を設立した。これによりコクヨは全国区メーカーとして成長していった。

 あまり知られていない会社だが、「ウィルクハーン・ジャパン」という会社がある。
コクヨの100%子会社である。ウィルクハーンは「オフィス家具のメルセデス・ベンツ」と云われるヨーロッパ有数のブランドです。ポルシェやフォルクスワーゲンなどの世界有数の企業がユーザーとなっている。「決して流行でモノは買わず、モノの良さを見極めて買う」というこだわりのユーザーを多く持ち、西ドイツのシュレーダー首相など著名人達から人気を勝ち得ている。80年に発表された FS-Lineは人間工学を盛り込んで、座る人の快適性を追求した椅子である。「シンプルでクール」なインテリアの邪魔をしないデザインになっている。
事業所向けオフィス用品の通信販売事業会社「カウネット」もコクヨの子会社である。
東京を基点として00年10月に設立したカウネットは、4年たらずの04年3月期には287億円を売り上げている。文具メーカーであるプラスが持つ「アスクル」(97年設立 04年5月期 売上高1227億円)には及ばないが、業態の先発企業「フォーレスト」(92年設立 04年2月期 売上高107億円)を後発企業があっさりと追い越している。03年にはオフィス通販業界初の地酒や地ビールの酒類販売にも挑戦している。
100周年を迎えるコクヨの事業戦略が窺える両社の活躍である。

 「コクヨの新しいヨコク=ブランドメッセージのお知らせ」を見ると、「ひらめき、はかどり、心地よさ」を挙げている。コンセプトは『私たちがお届けする商品やサービスが、お客様の感性を刺激し、能率を高め、心をなごませるものであって欲しい。そういう願いを表しているのが、このコクヨ新ブランドメッセージです。「ひらめくアイデア、はかどる能率、心地よいデザイン」を常に念頭に、一冊のノートから新しいワークスタイルの提案まで、コクヨはこれからも皆さまの良きパートナーとして活動を続けてまいります』
このコンセプトを具現化した商品が「カドケシ」や「たまほっち」だ。年間で 100万個も売れるヒット商品になったカドケシは十個の小さな立方体を組み合わせた形状で使い続けても次々と新しい角が現れるのが特徴だ。手の不自由な人や高齢者にも使えるホッチキス「たまほっち」は名のごとくタマゴ型のホッチキスで押すだけで綴じることができる。
黒田社長の考える新しい時代の戦略は「新しい需要を掘り起こし新しい価値を生み出す
「小さなニーズを拾い上げ、商品化するスピードを上げる」「モノだけでなく、使い方という付加価値をつけて売る」としている。
百周年を前に昨年の10月に持ち株会社制に組織を変更し、事業部門を16社に分社した。
小さな組織にすることで、スピーディーに変化することができる。コクヨ・ブランドのダイナミックな展開が期待できそうである。




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