ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 44

☆ オンリーワンの創出☆

2005.04.05号  

 関西系企業のためか関東では話題に上ることが少ないが、他社に真似されない技術を確立してユニークな、製品を連発しているシャープのオンリーワン創出を探ってみた。鈴鹿連山の麓にある三重県亀山市の工業団地に東京ドーム7個分もの広大な敷地の中に、「AQUOS」の生産拠点がある。亀山工場のノウハウは「秘中の秘」でブラックボックス化によって独自技術の流出を防いでいる。液晶パネル製造棟はレイアウトも含め、全て企業秘密になっており、役員をはじめ限られた技術者しか、判らないようになっていると言う。韓国などから破格の条件で工場誘致を持ちかけられても「中核技術は国内に閉じこめる」強いこだわりがある。過去に日本メーカーがVTRやノートパソコンなどの組立を労賃の安い台湾や中国に移管し、ノウハウを全て奪われた揚げ句に提携会社が自社生産をし始め、価格競争で脱落した苦い経験が数え切れないほどある。液晶テレビに関する基幹部品の大半を自社生産し、技術の流出防止とコスト低減に結び続けている。亀山工場には1500億円を投じて第二工場を建設し、第六世代の二倍の大きさのある第八世代の液晶パネル基板を06年10月より量産する。液晶テレビや液晶パネル事業は国内外メーカーの攻勢は強まっており、「液晶テレビはシャープ」というプランドを更に確固たるモノにすべく、攻めの経営はこれからが本番である。シャープの伝統である、競合他社が真似ようとしても真似できない独自技術を確立し、オンリーワン商品を生み出そうという戦略が世界市場を目指してテイク・オフした。

 ウォーター・オーブン「ヘルシオ」の人気が爆発している。電子レンジというのは真空管の一種であるマグネトロンから高圧の電波を発信して、電子の躍動を利用して食品を温める。シャープはスーパー・スチーム・ジェネレータというマグネトロンに代わる新しい技術を組み込み、摂氏300度にまで温度を上げた加熱水蒸気を食品に噴射して調理する。減塩調理や低カロリーの調理ができ、味も美味しいと健康志向の消費者に受けている。シャープでは液晶パネルやスーパー・スチーム・ジェネレータというキーデバイスを造りアクオスやヘルシオなどの応用製品を造る、技術の垂直融合の仕組みをつくっている。今は当たり前になったカメラつき携帯電話もシャープが世界で初めて造った。携帯電話だけなら通信技術だけでできる。カメラを付けるには映像の技術が必要になり、撮影した画像を送信したり、メール作成機能を付けるには情報技術が必要になってくる。カメラつき携帯電話のような機器では技術の水平融合が不可欠になってくる。このような仕組みから生まれる製品の幾つかを国内外シェアから調べてみた。世界シェアでは液晶テレビが他社の、本格参入が相次ぎ前年よりも低下したが48.1%(国内56.6%)と2位ソニーの14.9%を、大きく引き離しダイトツである。太陽電池ではクリーン・エネルギー政策の追い風を受け、都市部の住宅向けの販売が好調で、前年比7割増の248メガワットを生産し26.6%(国内54.4%)と、2位の国際石油資本系であるシェルグループの10.4%を大きく上回る。国内に目を向けると、電子辞書が26.5%で2位。ブラウン管テレビでは技術の水平融合であるビデオ一体型テレビで唯一シェアを伸ばして16.6%と首位ソニーに肉薄している。DVDレコーダーやビデオ・カメラでは9.8%と9.1%でともに国内5位であるが、6.2%及び4.2%と大幅にシエア・アップしている。電子レンジは99年に松下に同率首位に並ばれた以外は長年首位を守っていたが松下に僅差で首位を明け渡した。しかし、二社で50.7%のシェアで国内二強体制が明確になってきた。04年はヘルシオ効果で首位奪還の勢いである。(日経産業新聞編 05年版市場占有率より 03年調査)

 私のワーキング・デスクの周りには幾つかの電子機器がある。一番長く使っているのが電子手帳の「ザウルス」である。8年前に購入したモノだが、当時の電子手帳としてはインターネットに接続出来る優れモノで、モバイル・ツールとしては圧倒的人気があった。一番新しい機器が3月始め頃、経理にお願いして買ってもらった電卓である。電卓は4台目である。最初の電卓は8桁の表示器がついていたが7セグの真空管であった。電源はDCアダプターと乾電池の併用式で、電卓とは云ってもそれなりの大きさだった。コードは邪魔だし、電池は二次電池ではなかったので直ぐに無くなってしまった。不便であったが使い慣れると愛着が湧き長年使用した。薄れた記憶であるが24.000円位の購入価格であった。2台目は液晶表示で太陽電池と乾電池の併用で使い勝手は良くなった。価格は12.000円位だったと思う。キーの使い方や表示に慣れてしまったので3台目も同じモノを購入した。型古になってしまっていたので販売店からメーカーに依頼して在庫を探して貰った記憶がある。価格は2台目と同じで手に入った。今度の4台目は18个留嫋宿充┐12桁ついており、太陽電池駆動で価格は税込み2.070円であった。この価格なのであまり頭を下げることも無いのだが、会社だから一応お願いして買って貰った。今でこそカシオの牙城になっている電卓だが、64年世界初のトランジスタ式電卓、66年世界初のIC電卓、69年世界初のLSI電卓、73年世界初の液晶表示電卓、77年世界初の押しボタンをなくした厚さ5个離織奪船ー電卓を発売し、電卓の市場を牽引してきた。拙宅で使用している電子レンジもシャープ製である。そして、現在テレビは他社製であるが、地上波デジタル放送が始まったので、いずれ買い換えなくてはいけない。その時は「AQUOS」と決めている。なぜなら価格の低下もあるが、私もサユリストの一人だからだ。一般消費者向けの商品は機器性能のコスト・パフォーマンスが重要な事は言うまでもないが、売り方のソフト、つまりコマーシャルのキャスティングも大変重要な要素である。このような電子機器性能の進化と価格を考えると、供給者側から見るか、消費者側から見るかは別にして、数十年前の所得と比較した相対価格の下げ率は驚くべきモノがある。

 企業にとって最も大切な資産は「人材」である。エレクトロニクス業界におけるメガコンペティションの時代には、独自技術が不可欠となっている。技術は個々の社員に蓄積され、その個々の技術が集合されて会社の資産となる。独創的な商品の研究開発をするには10年もの長期になることも避けられない場合がある。その場合に社員は雇用に対する安心感がなければ落ち着いた取り組みができない。シャープでは「技術は人に宿る」との考えのもと、終身雇用を守ると同時に能力主義とか実力主義などを明確に打ち出して活性化をはかっている。最後にシャープのオンリーワン創出の原点である、「シャープ・ペンシル」を発明した創業者・早川徳治著『私の考え方』から引用させてもらう。『ひとつの製品を開発して、商品として売り出すまでにはいろいろと苦労がある。ところが、それが良いとなると他社も同じようなものを売り出す。日本人は真似が上手いと云われ、商業道徳上からこれを批難する人もいる。しかし私は会社の研究部あたりには「他社が真似するような商品を造れ」と云うのである。他が真似てくれるような商品は需要家が望む良い商品、つまり売れる商品なのだ。だから他がいつも真似てくれるような商品を出すように心懸けていれば、企業は安定して成長していく。真似が競争を生み、技術を上げ、社会の発展になっていく。ただ、先発メーカーは常に後から追い掛けられているわけだから、すぐ次を考えなければならないし、勉強を怠ってはならない。また、一つ良いからといって現状には満足してはいられない。元祖だからといってじっと構えてはおれない。さらにより優れたものを研究することになるわけで、真似されることも、結局は自分のところの発展に役立つと考える。』


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