ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 59

☆ 王室の陶磁器☆

2005.07.19号  

 北ヨーロッパの冬は厳しい。人々は寒い屋外に外出するよりも暖房の効いた屋内で過ごす時間が自然と多くなり、室内で楽しく生活するための家具や食器等の調度品が発達した。
そんな北ヨーロッパの生活文化の中から生まれたのが、「ロイヤル コペンハーゲン」だ。トラディショナルな陶磁器ブランドとしては世界最高峰の評価を受けている。
1775年、当時のデンマーク国王クリスチャン 7世と 皇太后ジュリアン・マリーの援助の
もと、王室御用達の製陶所として設立された。230年を経た現在も、芸術性と品質の良さ
を兼ね備えた製品は、世界中に多くのファンを持っている。
トレードマークの王冠と 3本のブルーの波型ラインは、皇太后ジュリアン・マリーが自ら提案したと云われている。王冠はデンマーク王室との深いつながりを表し、3本の波線は
デンマークを囲む3つの海峡を表している。
製品の最大の特徴はハンド・ペイントで今でも手作業による絵づけがおこなわれている
ロイヤル コペンハーゲンの名が世界に知られるようになったのは、1885年にアート・ディレクターになったアーノルド・クローの功績が大きかったとされている。アンダーグレーズ技法と云われる、素焼きの器にブルーの顔料を付け、上薬をかけて高温で焼き上げる陶器を手がけた。代表的な製品が設立当初から人気の高い「ブルーフルーテッド」は19世紀ヨーロッパの上流階級に愛用され広く知られるようになった。唐草などのモチーフは当時の文化的先進国であった中国の影響があったのではないかと云われている。
もう一つの技法が、色づけする毎に窯に入れることを繰り返すオーバーグレイズである。
代表的なのが「フローラダニカ」(デンマークの花)でロシアのエカテリーナ2世への贈り物として製作が始まった。彩色の豪華さと優雅さで名高い。


 昔、王侯貴族達が主催する記念式典などのイベント行事では、招待客に贈る記念のプレートをロイヤル コペンハーゲン社に製作させた。そのプレートは招待される人の数しか製作されず、招待された者しか手にすることはできない大変なステイタス・シンボルであった。復刻されることのない貴重な「メモリアルプレート」を招待客は家の宝として飾った。
アーノルド・クローの作品も数多くあったと云われ、デンマークの古城を解体したときには、当時の貴族達のコレクションが数多く発見されると云う。
メモリアル・プレートを飾る風習は、やがてイヤー・メモリアルへと繋がっていった。
ヨーロッパの上流階級や王侯貴族の殆どの人達は召使いを雇っていた。毎年クリスマスになると大皿(プレート)に食べ物を山のように盛って召使い達にプレゼントをする風習があった。召使い達は大皿を壁に掛け、プレートの贈り主は誰か、誰が一番美しいプレートを貰ったかを自慢しあうようになった。これを知った王侯貴族達は金属などの材料を用いたり、彫刻を施したりして美しいプレートを造ることを競い合うようになっていった。
これがイヤープレート・コレクションの始まりになったと云われる。
イヤープレートは、その年の終わりには原型を壊してしまうため二度と同じモノは造られることはない。ロイヤル コペンハーゲンでは1908年にクリスチャン・トムセンによってデザインされた「聖母マリアと子供」というモチーフで発表して以来、一枚も欠かすことなく現在に至っており、ヨーロッパの家庭ではクリスマスの習慣の一部にもなっている。

 1805年、デンマークのオーデンセで、貧しい靴職人に子供が誕生した。14才で役者を志してコペンハーゲンに出る。30才の時にイタリア旅行に出て、その体験を書いた「即興詩人」で作家として認められるようになった。
その後「マッチ売りの少女」「おやゆび姫」「みにくいあひるの子」「はだかの王さま」など70才で亡くなるまでに150偏あまりの童話を書き、「童話の王様」として世界中の人々に愛された。日本人なら誰もが一度は読んだことがあり、大変親しまれているデンマークの詩人・童話作家である。
今年はハンス・クリスチャン・アンデルセンの生誕200年にあたる。デンマーク本国では各国からアンデルセン親善大使を招き、女王陛下を始め関係者の出席のもと、誕生日の4月2日に盛大な祝賀イベントが開催された。
世界各国や日本各地でもアンデルセン・フェアやフォーラムのイベントが催されている。
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの誕生はロイヤル コペンハーゲンが設立された30年後である。アンデルセン童話の絵本を見ていると、当時のデンマークの文化や王侯貴族達の生活ぶりを彷彿させるものがある。

 ロイヤル コペンハーゲンは1889年のパリ万国博覧会でグランプリを受賞したのを始め、数々の受賞を得て世界の愛好家から脚光を浴びるようになった設立時からの伝統を守り
その歴史と実績を刻みながら造り続けられている。食卓の文化そのものと云える 230年の歩みも、最近では自由に組み合わせられる機能性と、手作りの温もりを兼ね備えた「ウワスラ」シリーズなどのように
ライフスタイルの多様化に応じたデザインも誕生している
日本では1967年にロイヤル コペンハーゲン ジャパンが設立された。東京、大阪、福岡の直営店のほか、全国有名デパート内にあるショップ・イン・ショップが37店舗ある。
直営のアウトレット店は静岡県
御殿場市、大阪府泉佐野市、栃木県佐野市、佐賀県鳥栖市に展開している。
確かな品質に培われたロイヤル コペンハーゲンのテーブルウェアーは、これからもファンの食卓風景を楽しませてくれるだろう。




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