ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 135

☆ 経営者は名誉より実利 ☆

自動車メーカーのスズキは、125日に2007年の軽自動車販売見通しを発表した。
前年比4.3%減の585000台と、62万台を見込むダイハツ工業を下回り、34年間(06年の統計未発表のためスズキ首位として)守り続けてきた軽自動車首位の座を陥落することがほぼ確実になった。06年度の販売台数でも、ダイハツ工業を下回る可能性がある。
国内市場での四輪車販売も675000台と3%の減少を見込んでいる。「スイフト」などの小型車に販売の重点をおくが、減産を継続中の軽自動車の減少分は補えない見通しである。
だが、記者会見した鈴木会長に暗さはない。軽自動車のシェア低下にも動じない強気な発言には、海外における小型車販売の絶好調が背景にある。同日発表された07年の四輪車の世界販売が、06年比8%増の235万台とし、欧州やインド、米国などで小型乗用車の販売を上積みする。海外ではスイフトや「SX4」「エスクード」などの、小型車の受注が急増している。イタリアなどでは注文を受けても、販売する車が無い状態が続いており、昨年
10月からは軽自動車を減産し、小型車に生産能力を振り向けている。
国内での軽自動車メーカーとしてのイメージが強いスズキだが、連結売上高に占める海外比率は、073月期には68%に達する見込みである。

海外での小型車販売が絶好調で、06年でも欧州市場での販売が、30万台に達するなど小型車攻勢で好調を維持できるとの見通しである。四輪車の生産計画は、国内が前年並みの1209000台、海外が19%増の135万台とし、海外生産比率が初めて5割を超える。
ハンガリー工場で年産16万台から22万台、インド工場で63万台から71万台に増産。
インド市場については、将来性が非常に大きいが、他社に先駆けて進出した効果が、何時までも続く情勢ではなく、競争激化に対する体勢を整備するため、経営資源を重点的に投入する考えである。
二輪車(四輪バギー含む)についても、世界販売は22%増の3552000台を見込んでいる。生産は20%増の3573000台とし、国内生産は5%ほど落ち込むが、海外で26%の増産を計画している。
このように海外で快進撃を続けているスズキだが、提携しているゼネラル・モーターズ
(GM)が苦境に陥っている。81年に提携したときには「鯨とメダカが手を組んだ」と言われ、スズキの独自性を危惧されたが、鈴木社長(当時)は「蚊ならば鯨に飲み込まれずに、高く舞い上がれる」と反論して、独自経営を強調し、社員にはGMに対する依存心を戒めた。
同じGMグループの富士重工業といすゞ自動車は、GMが05年と06年に相次いで保有株式を売却したため、スズキは国内唯一のGMグループとなっている。
昨年3月に不振のGMから買い取った自社株約17%(約3180億円相当)については「経営は資金的に問題なく、株式の売却は重大な関心事ではない。当面は持ち続ければよい」として保有する考えを示し、今後もGMとの提携関係は維持する計画である。

絶好調のスズキであるが、そのバックボーンはオーナー経営者である鈴木会長の指導力に負うところが大きい。今年、喜寿を迎える鈴木会長の、最近の語録を拾ってみた。
061月にガソリンの高騰などで、国内軽自動車市場の拡大を聞かれて、「軽じゃ嫌だという時代があったが、(車の性能も)軽で十分という時代になった」。
4月にはトヨタなどのリコール問題を聞かれて、「赤ん坊が泣いて親を呼ぶように、工程内で問題が起きれば、すぐに報告するように」と、品質対策の徹底を指示し、「品質問題が起きれば、会社の経営が傾く」と、社内に警鐘を鳴らし続ける。
8月に軽自動車の減産を聞かれて、「経営者に大事なのは売上高や利益で、軽自動車のシェア首位の名誉ではない」。業績好調を聞かれると、「好業績のときこそ危機が芽生える。この程度の働きで、業績が上向くと社員が考える事が最も危険」と答え、さらに小型車の好調を聞かれると、「僕が車造りのデザインに関与せず、若い人達に任せたから。ただ、数字とカネだけは今でも僕が握っている」。

11月に軽自動車市場での販売競争激化で自社登録する会社に、「行儀の悪い振る舞いは、厳に慎むべき」。また、小型車発表会見では、軽自動車を減産して、小型車に生産能力を振り替えたことを聞かれ、「中学でも高校でも成績は全部一番がいい。でも、生産能力が無いから、どれを選ぶかと聞かれれば、私なら体育・音楽(軽自動車の意味)を減らしてでも、国・数・英(小型車の意味)を重点的にやる」。
071月に急拡大に人材の育成が追いつかないことを聞かれ、「大変な経営の失敗をしでかした。人材が払拭した」。「人材の育成には10年から15年掛かる。今の戦力で二倍の知恵を出せ」と、社員に奮起を促している。また、07年の軽自動車シェア首位陥落を聞かれ、「軽自動車で五千台、一万台差で首位になるより、五千円、一万円もらった方が嬉しい」。

スズキは、19203月に鈴木式織機株式会社として設立され、546月に鈴木自動車株式会社と改称した。818月には米ゼネラル・モーターズと提携。9010月にスズキ株式会社に改称した。本社所在地は静岡県浜松市高塚町。四輪車は軽自動車が主力だが、小型車や普通車の躍進が著しい。自動車以外ではモーターボート、船外機、発電機、住宅、それに身体の不自由な人達が使う電動車椅子なども手がける。
スズキは国内他社に先駆けてインド進出を果たし、インド政府との合弁会社マルチ・ウドヨグを設立した。02年には子会社化し、今では連結経常利益の40%を稼ぎ出している。
軽自動車では世界のトップシェアを持ち、73年から05年まで33年間連続して首位を占めていた。日産自動車やマツダへもOEM供給を行っている。071月より、日産自動車との提携も開始し、スズキ・アルトを日産「ピノ」として、日産・セレナをスズキ「ランディ」として相互に供給車を販売する。
スズキには「人と同じ事はやらない。やるなら世界一を目指すのがスズキ」との企業風土があり、オートバイを中心に常に前進的な製品造りで知られている。
スズキは073月期に3兆円の連結売上高を見込んでいる。一兆円から二兆円には12年掛かったが、三兆円にはわずか4年で達成する。急成長に鈴木会長は、社内の慢心を常々戒めている。売上高一兆円に達した時に「スズキは(仕入材料費の7000億円を除けば、社内付加価値は)3000億円しかない中小企業」と言い、三兆円企業となる今でも、大企業病に陥ることに危機感を訴え続けている。
07年の四輪車世界販売計画は8%増の235万台。世界10位の仏ルノー(06年、243万台)の水準に並ぶ、世界自動車業界の有力プレイヤーとなった。スズキと鈴木修会長は、国内のみならず世界の自動車業界においても、存在の重みが一段と増している。
129日の新聞紙上には、鈴木会長にインド政府から「パドマ・ブーシャン」勲章が授与される事が掲載されていた。82年に国内メーカーでいち早くインドに進出し、インドの自動車産業を発展させた功績が高く評価された。


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