ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 229

☆ スペインのクリエーター☆

2008.11.26号  

 「シビラ」は1983年に、シビラ・ソロンドが自らの名を冠して、創設したスペインのアパレル・ブランドである。彼女はアルゼンチン出身の父と、ポーランド人の母をもち、1963年にアメリカ・ニューヨークで生まれる。7歳の時に家族と共に、スペイン・マドリッドに移住。1980年に17歳でパリに渡り、2年間滞在してイヴ・サンローラン(既号176.C・ドヌーブをイメージ)の下で経験を積んだ。1983年10月にマドリッドで、初めてのショーを開催し好評を得る。1985年の3月にバルセロナの、ガウディフェアーで85-86AWコレクションを発表。同年夏には初のシューズ・コレクションが店頭に並ぶようになる。86-87AWのコレクションが、有名専門店など各方面から注目を浴び、国際的な評価を得るきっかけとなった。1987年になると服とアクセサリーを、国際的な販路に展開するようになる。
同年春にはシーツ等の寝装品のコレクションを初めて発表。秋にはマドリッドに初のブティックをオープンした。
翌年にシビラとしては、初の国際ファッション・ショーとなるミラノ・コレクションに参加して、88-89AWコレクションを発表する。1989年にはスペインで、シューズやバッグの製造を開始。次いで89-90AWコレクションでは、イタリアで製造したニットウェアーを発表。わずか20歳でデビューしてから25年を経た現在、マドリッドから発信されるシビラの作品は、全世界で販売されており、スペインのファッション界を担う旗手として世界中から大きな注目を集めている。

 シビラの作品は、女性がそれを着たときに、エレガントで美しいと感じる事ができる服作りを基本としている。本来女性に備わっている独特の美しいラインを損ねることなく、しかも動きやすく、着心地の良い服を提案するというコンセプトで作られている。また、トレンドに左右されることなく、長く自由に組み合わせて着ることができる服が、顧客に歓迎されている。シビラの服の中には、高度に洗練されたものもあれば、非常にシンプルなものもある。様々な表情を持つ全ての作品が、着たときに一人一人の個性にしっくりと馴染み、最高の服を作りたいと云う、彼女の精神を表現している。
こうした彼女の持つブランド・ポリシーが、世界中の女性達に受け入れられており。とくにターゲット・エイジとされている30歳前後の、女性達からは圧倒的人気を勝ち得ている。
昨年の07-08AWコレクションを、パリ・プレタポルテ・コレクションで発表した際には、大きな反響を呼び起こし、ファッション界にシビラの時代が到来したことを実証した。

 シビラが日本で成功を収めた後、メーカーなどからの強い要望で、1993年にセカンドラインとして「ホコモモラ・デ・シビラ」を発表した。もちろんデザイナーはシビラ自身であった。シビラよりもカジュアルで、よりリーズナブルな価格帯のコレクションである。
シビラよりも若い年齢層をターゲットとし、手頃で購入し易い価格設定のブランドとして創設された。しかし、ターゲット・エイジについては「ホコモモラ・テイストがお好きなすべての方へ」として、敢えて限定しない広報戦略をとっている。日本で大成功を収めた後、1999年にスペインに逆上陸して紹介される。ホコモモラは楽しくて屈託のない個性溢れるコレクションで、日本で製造され、スペインでは200箇所を超えるセレクトショップや、マドリードにあるホコモモラ・ショップで販売されている。因みにホコモモラとは、スペイン語で「かわいいじゃん」との意味だとか。
このコレクションは気軽に、そして愉快に着こなしが楽しめ、快適でありながらチョッピリと、セクシーさも持ち合わせおり、これが若いファンに大受けしている。主に自然素材を使用し、たくさんのプリント柄や色彩があり、ユーモアにも溢れた作風は、自由自在のコーディネートも、楽しめるようにラインナップされている。配慮の行き届いたパターンを元に作られており、何時でも人それぞれを、より際だたせて様々な体型やシチュエーションにも対応可能である。質の良いベーシックなアイテムは、他の女の子を羨ましがらせたい、女の子のための服に仕上がっている。ホコモモラは、デザイナー・イメージのないブランドとしてスタートしたが、その割にはしっかりとした個性を発揮している。
最近は商品ラインを多様化する計画に着手。描く戦略は全ての商品にブランド独自の、オリジナルでユニークな特徴をしっかりと刻みながら、シューズ、帽子、傘、スカーフ、コスチューム、ジュエリー、水着といった新しい製品分野へブランド展開していくことだ。
ホコモモラでは先頃、子供服ブランドを立ち上げ、さらにフレグランスやアイウェアーの分野にまで、同様の戦略を展開していく計画である。
ホーム・テキスタイル・ラインの「ホコモモラ・カーサ」では、タオル、エプロン、スリッパ、シーツ、パジャマ、キャンドル、シャワーカーテン、文房具などのアイテムに、色彩溢れるホコモモラの世界が広がっている。

 日本におけるシビラおよびホコモモラは、イトキンがマスター・ライセンシーとして、インポート製品の輸入販売、国内のライセンス生産を統括している。イトキンは1989年夏にシビラと、日本向け婦人服プレタポルテの製造販売契約を締結。翌年4月には東京・神宮室内競技場で、90-91AWのデビュー・コレクションを開催。更にその翌年9月には東京・南青山にブティックをオープンした。その後はバッグ、シューズ、ハンカチ、手袋などを次々と発表し、プレタポルテはもとより、日本におけるビジネスは着実に拡大している。
また、シビラは日本にも関心が深く、洋服だけにこだわらず、着物、下駄、テーブルウェアー、風呂敷などの小物まで、様々なアイテムをプロデュースしている。
シビラが育ったスペインの風土から生まれた独特の「シビラ・カラー」と、着心地の良い素材や、女性を女性らしく見せるカッティングや、フォルムは個性と温もりを感じさせている。スペインのクリエーター・シビラが生みだすアイテムは、どんなシーンにも、ほど良くマッチし、一度身につけた女性を虜にしてしまう魅力がある。
シビラの平均的プライスゾーンは、ジャケット\29.000〜\59.000、ワンピース\29.000〜\79.000、パンツ\19.000〜\39.000、スカート\19.000〜\39.000、ブラウス\19.000〜\29.000、ニット9.900〜\33.000、カットソー\9.900〜\19.000、コート\59.000〜\99.000、バッグ\19.000〜\49.000となっており、大手百貨店や有名専門店で販売されている。


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