ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 305

☆ メンズファッションの聖地☆

2010.05.26号  

 女性がファッションの聖地としてフランスに憧れるならば、メンズファッションはイギリスと並びイタリアが聖地である。ミラノの3Gと呼ばれたジョルジオ・アルマーニ(既号131.モードの帝王)、ジャンニ・ベルサーチ(既号134.連続殺人魔とベルサーチ)、ジャン・フランコ・フェレ(既号156.伊ファッション界の重鎮逝く)など、世界を舞台に展開するブランドが数多くある。ベルサーチやフェレのように、創業デザイナーが他界したあとも、ブランドは引き継がれている。高名な彼らがデザインした高級スーツであっても、オシャレは何と言ってもコーディネートのバランスにあり、程良く調和するシャツが求められる。イタリアには紳士の身嗜みとして古くから多くの高級シャツメーカーがあり、世界を舞台にしてメーカー間の熾烈な競争が繰り広げられた。やがて「シャツと云えば、メイドインイタリィ」と云われ、高級シャツの生産国として世界で認知されるようになった。「ピエトロ・プロペンザーレ」は、ナポリで1900年に創立された。現在のディレクターはジュリオ・ピコーネ。ハンドメイド仕上げでアームホールが上付で小さく、柔らかな光沢のある最高品質のコットン生地で造られている。淡いパステル調の無地が多く、生地の高級感を大切にしている。日本人の体型に合うスリムフィットのシャツが人気である。取扱会社はアフィニート社で、インターナショナルギャラリービームスで販売されている。「ルイジ・ボレッリ」もナポリで1957年に創業を開始した。イタリアのシャツブランドとしては、フライやバルバと共に、最も高く評価されているブランドの一つである。ナポリの伝統工芸によるハンドメイド仕立と、高品質な素材使いが人気となっている。シャツ造りのポイントとなるアームホール、剣ボロ、ボタン、ボタンホール、ガゼット、前立て、襟、ヨークの8カ所はハンドワークで仕上げ、その他を機械縫製で行っている。襟型にはルチアーノ、エリオ、ニコラ、ジャンニ、ニシダ、ブァレリオ、ドナート、ナンド等に名付けられている。現在は一人息子のファビオ・ボレッリが後継となり、ネクタイやスーツ、ジャケットからコートまで幅広く展開している。イタリアの高級紳士服ブランド・キートンにして「うちのスーツに合わせられる数少ないシャツ」と言わしめた。企業としても拡大し、現在はホールディングカンパニーのクラス99社が運営している。一時はエルメス(既号220.御すのはお客様)のシャツを縫製していたとも云われている。日本には2006年に東京・六本木に初の直営店をオープン。2007年秋からは伊藤忠商事が輸入卸をしており、伊勢丹などの百貨店や、ユナイテッドアローズなどのセレクトショップ、シャツ専門店で販売されている。シャツの価格帯は36000円から55000円程度となっている。

 「フライ」は1962年にボローニャで創業した。創立者はルチア・パシン。シンプルで洗練されたデザインが特徴である。ルイジ・ボレッリがカジュアル的なのに対して、フライはドレスシャツタイプである。クラシコ・イタリアに加盟している。クラシコとはその名の通りクラシックという意味である。だが、同時に上質という意味をも指し示す。さらに厳密に言えば、本来「クラシコ・イタリア協会」というグループに加盟している数10社のメーカーにのみ許された呼称なのだ。手作業とミシンによる二重縫い、ステッチワークの精緻さなど、丁寧なハンドワークと厳選された素材、洗練された雰囲気を作り出すカッティングにも定評がある。日本ではドゥロワーなどのセレクトショップで取り扱っている。バーニーズ・ニューヨークではセミオーダーも受け付けている。「オリアン・パー・トゥモローランド」は、ジャン・ジエタノ・オリアンがギ・ローバーの下で修行を積んだ後、1990年に創立したブランドである。創業から間がないが、しっかりとした縫製の高級シャツを手頃な価格で提供するのが人気を呼んでいる。イタリアの高級シャツは、ほとんどが小さな工房で職人によるハンドメイドで造られているが、オリアンは極力人手を省き、機械を使えるところは機械で縫う。しかし、シャツ生地の品質やディテールの縫製には、妥協しないというポリシーが貫かれている。1僂8回運針するエイトステッチ縫製を駆使する、マシンメイドシャツの最高峰と云われる。

 5月13日、アメリカCNNテレビが鳩山首相のファッションについて酷評した。鳩山首相が4月に官邸で開催した国民と茶話会形式で直接対話する「リアル鳩カフェ」での服装である。赤や青、黄色のチェック柄のシャツを取り上げ、「低い支持率を回復する助けにならない」と、ファッション感覚を皮肉った。アメリカ市民の「クレヨンみたいで注目を浴びるには良いかも」「クジャクみたい」などの声も紹介。挙げ句には「オバマ大統領が、このシャツを着ているところを想像できるか」と疑問を投げかけた。アメリカではワシントン・ポスト紙までが、コラムなどで鳩山首相を揶揄する論調が目立っているという。一方、鳩山首相が愛用しているとされる高級シャツブランド、「G・イングレーゼ」のアンジェロ・イングレーゼ社長が、14日付けのイタリアのコリエレ・デラ・セラ紙に、「絶対に我が社の製品ではない」「最悪だ」と酷評。鳩山首相が着用したシャツが、一部の報道でG・イングレーゼの製品だとされたことに反論。さらにイングレーゼ社長は「全体的にひどいモデルだ。一目見て生地はとても粗悪なようだ。肩は落ちているし、腰の部分は大きすぎる」と続けた。欧米メディアでは鳩山首相のシャツは「大失敗のファッション」「パッチワーク」などと報じている。G・イングレーゼはイタリア南部のプーリアにある高級シャツブランド。カルロ・リーバ社の180双、220双のシルク糸で、生地は丁寧に仕上げられており、ヨーロッパだけでなく日本やアメリカにも輸出されている。日本では企業経営者やプロスポーツ選手、それに政治家にもファンが多いという。最近は鳩山首相のファッションセンスが度々話題となっている。ファッションショーに出てポーズを取ってみたり、金色のネクタイがメディアに取り上げられたり、ピンクのハート模様の白地のシャツを着たりしてマスコミを賑わしている。ネット上でも大人気となっているそうで、メディアが酷評したシャツでは、これとそっくりなシャツを持ったユーザーが、2ちゃんねるにスレッドを立ち上げ、鳩山首相と同じポーズで着こなして見せているという。この人の書き込みによると、価格は19000円だと云う。因みに、鳩山首相のファッションコーディネーターは、夫人だと聴いたことがあったのだが・・・。

 「バルバ」は1964年にアントニオ・バルバと、ビットリオ・バルバの兄弟がナポリで創業した。叔父はキートンの創業者チロ・パオーネである。バルバ・ブランドの設立当初は、シャツなどを中心とした小さなアパレル工場であった。ブランドとして成長を遂げるのは1990年代になってからで、長年培ったハンドワークやカッティングなどの、シャツ造りの技術をもとにした商品展開を拡大していった。イタリアのシャツブランドとして、最も高い評価を受けているブランドの一つである。生地が良いことは勿論だが、アームホールが細いものや細身に見せるシルエットのシャツでも、非常に動きやすく体に良くフィットする仕上がりとなっている。現在ではメンズシャツ以外にも、レディースシャツ、パンツ、ネクタイなども手掛けている。ブラックレーベルとゴールドレーベルの2ラインがあり、ゴールドレーベルの方がハンドワークで造り込まれているので価格はやや高い。バルバは他のメーカーと比べると、襟台が少し高めに造ってあり、襟元が上品に見える工夫がされている。袖付けの部分が丸みを帯びたデザインで、丁寧な縫製が細部にまで施されている。人気があるのが、ブルーとライトグレーの少し太めのストライプ柄だという。夏に向かうと麻との混紡も人気で、少しシワになったのをさり気なく着るのもオシャレなんだとか。伊勢丹などの百貨店やユナイテッドアローズ原宿本店メンズ館などのセレクトショップで買うことができる。バーニーズとのコラボレーションラインも展開している。買い求める時には、イタリア人と日本人では腕の長さや、胴回りなどの体型が異なるので、サイズを良く確認することが必要とのこと。


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