ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 338

☆ 47都道府県で展開☆

2011.01.19号  

 衣料品チェーンストア「しまむら」は、郊外型店舗を中心に47都道府県に出店。近年は都内23区や台湾でも店舗展開している。普段着と称される実用衣料を安価で販売し、ファッションブランドとして全国的に認知されている。国内にある店舗の外観はベージュ、ピンク、赤色の3色で統一されており、床は御影石を使用して高級感を演出している。創業者である島村恒俊が埼玉県の北西部にある比企郡小川町で、「島村呉服店」を営業していたが、1953年に株式会社に改組して設立する。1957年になると当時としては珍しい営業形態の、セルフサービス方式を導入。1961年にチェーン店として第一号となる「しまむら」を埼玉県東松山市に開業。その後、順次6店舗を展開。同時に本社機能も東松山市に移転して、本社集中管理体制を確立してチェーン化の基礎を作る。1972年に「株式会社しまむら」へ社名変更。1975年にはコンピュータを導入し、独自システムの開発を開始。その後は埼玉県外へも店舗展開を加速し、同時にオンラインによるネットワークの確立や、商品をデータベース化して単品管理するなど、コンピュータ機能をフル活用する。1980年代後半になると店舗数も100店舗を超え、全商品のバーコード化と伝票レス化による商品管理システムを稼働させる。1988年には東京証券取引所第二部に上場。1991年には第一部に上場。1997年に500店舗突破。2002年には沖縄県への出店を開始し、47都道府県への出店を達成。2003年には会社設立50周年にして、グループの店舗数が1000店を突破した。

 2010年2月期現在で、「ファッションセンターしまむら」の店舗数は1162店舗。1996年に若年層をターゲットとして設立した「株式会社アイベル」は234店舗。2000年に新業態としてスタートした服飾雑貨の専門店「ジャンブル」、ベビー・トドラー用品の専門店「バースデイ」も、それぞれ69店舗と112店舗を数える。おしゃれなシューズを扱う「ティバロ」も11店舗。1997年に台湾桃園市に設立した思夢楽股分有限公司が展開する「流行服飾館・思夢楽」も29店舗となり、グループで1617店舗を数えて好調に推移している。国内のアパレル業界の動向は、2003年以降拡大を続けていたが、2007年から減少に転じ、2008年の業界規模(主要対象企業64社の売上高合計)は、4兆3729億円となっている。経済産業省「08年商業販売統計」によると、1998年から大型小売店の衣料品販売額は減少を続けており、昨年3月期決算時点で国内上位7社は、ユニクロ(既号161.世界ブランド「ユニクロ」)やGU(既号260.爆安を買って自由に着る)を傘下にするファーストリテイリングと、しまむらを除くと対前年比マイナスの売上高となっている。アパレル業界が苦戦を強いられている主な要因は、消費者の消費価値観の変化による個人消費の低迷や、百貨店の極端な業績不振が挙げられる。百貨店を中心とした高価格帯を主戦としたアパレルメーカーは苦戦しており、その典型的な例として、レナウンが中国企業の傘下(既号307.日本ブランド買収に走る中国)になったことであろう。一方、SPA(製造小売り)をコアコンピタンスとしているファーストリテイリングや、しまむらなどの低価格帯路線を取っているアパレルメーカーは比較的好調な業績を維持。一部の富裕層を除き、消費者の一般的指向は「安くて良いもの」に傾いており、外資系のH&M(既号217.ファスト・ファッションの雄)やフォーエバー21(既号251.激戦区に殴り込み)の上陸もあり、アパレル市場全体の勢力図が、この数年で大きく様変わりの状況となっている。

 1996年頃、ミニスカートに厚底ブーツ、ロングヘアに茶髪、そり落とした後に描く極端な細眉が特徴で、それに日焼けサロンで焼いたような浅黒い肌が大流行して話題となった。その頃、歌手・安室奈美恵を模倣したファッションを「アムラー」と呼び、この年の現代用語の基礎知識で新語・流行語大賞に入賞した言葉である。その後は、シャネルブランドの愛好者をシャネラーと呼ぶようになり、飯島直子風のファッションをナオラー。華原朋美風のファッションをカハラー。篠原ともえ風をシノラー。君島十和子の熱心なファンをトワラーと呼ぶなど、「ラー」つき言葉が次々と生まれた。2009年2月12日に放送された「ズームイン!!SUPER」の「バードウォッチング」コーナーで取り上げた女子高校生の流行語によると、しまむらの洋服を着る10代から20代の女性を「しまラー」と呼ぶのだそうだ。その年の3月27日に元モーニング娘の一人で、歌手やタレントとして活躍する辻希美が、自身のブログでしまむらの商品を愛用していることを記述。小学生の頃からしまむらを利用しており、タレントになった現在でも実家に帰ると時々買い物をしていると云う。970円のパジャマや1280円のワンピースを買ったことや、夫である杉浦太陽の靴下を買ったことなども記述していた。その後はテレビのワイドショーに出演しているタレント達も次々と「しまラー」であることを公言。ピーターや高畑淳子、お笑い芸人で埼玉県東松山市出身のだいたひかる。それにCMに出演している埼玉県熊谷市出身のオリンピックランナー大島めぐみ(旧姓田中)、タレントの山川恵理佳、NHKの天気予報にも出ている気象予報士の佐藤公俊らも、「しまラー」であることを隠さない。一昔前には埼玉県を「ダサイ玉」と呼ぶ人がいて、それに加えしまむらは郊外型で地方からの店舗展開だったこともあり、しまむらが販売するファッションは、ダサイとの先入観があったようだ。しかし、最近のしまむらの商品は、センスの良いものも多く、若いファンからは「えっそれって、しまむらなの」「これいいや、これ欲しい」と云う声が聞かれ、口コミでのファンが急増している。ピーターなどもブランドものやファッションに拘りがある印象を受けるが、全身がブランドものではなく、ブランドものとしまむらものを、適度にコーディネートすることがお洒落なようだ。ブランドのジャケットの下に、しまむらのTシャツとか、またはその逆とかで、あまりブランドものでキメ過ぎるとチョット嫌みだが、そこにしまむらの一品を併せることで、チョット崩したイメージにすることがお洒落なのだそうだ。

 世界のアパレル専門店売上ランキングを見ると、しまむらの健闘ぶりが読み取れる。データは昨年1月時点の2008-2009ランキング(為替レートも同時点)である。1位インディテックス1兆4325億円[09.1月期 基幹業態ZARA 65.5% (既号255.ファッションは鮮度が命)]。2位ギャップ1兆3291億円[09.1月期 基幹業態GAP 41% 、OldNavy 39.3% (既号243.世界一のカジュアルブランド)]。3位H&M1兆1244億円(08.11月期 基幹業態H&M ほぼ100%)。4位リミテッド8274億円(09.1月期 基幹業態VictriaSecret 62%)。5位ファーストリテイリング6850億円(09.8月期 基幹業態Uniqlo 84%)。6位ネクスト4871億円(09.1月期 基幹業態Next 94%)。7位しまむら4108億円(09.2月期 基幹業態 しまむら 84%)。しまむらは世界の強豪に伍して7位にランクイン。国内でもファーストリテイリングに次いで2位と大健闘している。2010年2月期では連結で4296億円を売り上げる。かつては国内アパレル業界の双璧と云われたワールドの3141億円(09.9月期)や、オンワードHDの2486億円(10.2月期)を大きく上回る快進撃を続けている。ワールドやオンワードHDは百貨店中心の販売形態を取っていたが、百貨店の凋落とともに苦戦を強いられている。対する世界の上位にランクされている企業は、すべてファストファッションの形態で世界中に店舗展開している。今後は価格競争も益々激化の一途となるが、しまむらも海外での展開が飛躍に欠かせない戦略となっている。2月決算であるしまむらの最新データは、春頃には発表される。


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