ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 339

☆ 冬の高級魚が大豊漁☆

2011.01.26号  

 近年は庶民の食卓に乗ることが少なかった高嶺の花が、スーパーの鮮魚売場で大人気となっている。今年は冬の高級魚である日本海産の「寒ブリ」が、記録的な大豊漁で地元は活気に溢れている。この時期に富山県氷見漁港で水揚げされる脂がのった上質なブリは、「氷見の寒ブリ」として全国的に知られるブランド魚である。富山湾の定置網魚で採れるブリは、昨年の12月下旬から一匹10キロ前後の型の良いものが多く、今月中旬までに計320トンで平年の20倍、不魚だった昨年の70倍、豊漁だった2006年と比較しても約3倍の漁獲高で、漁業関係者を喜ばせている。京都府の舞鶴港や石川県沿岸でも、久しぶりに寒ブリの活況に沸いている。昨年末からの大量水揚げについて、新潟にある日本海区水産研究所の話によると、この海域では元々6キロ以上のブリが豊富だったことに加え、今年は強い寒気が入ってきたため、北陸沿岸まで魚群が南下してきたのだと云う。東京中央区の築地市場でも、1月の天然ブリの入荷量は中旬までに、日本海産を中心に前年比2倍となっている。1匹6キロから7キロの中型で、最高級の氷見産でもキロ当りの価格が800円前後で取引されており、昨年の半値以下だという。

 どんな商品でもブランド化されると、必ず偽装品が登場する。今度は冬の味覚である「氷見産の寒ブリ」に疑惑が発生。ことの発端は築地市場の卸売り業者で作る東京都水産物卸売業者協会が、昨年の12月16日付けで出した「氷見産ブリ、産地表示についての要望書」が騒動の始まりだった。要望書などによると、産地偽装の疑いがあるのは、地元の仲買業者が1月13日から15日にかけて氷見産として築地市場に出荷した824匹の一部が、卸売り業者から「脂の乗りが悪い」「やせ細っている」「身が赤い」との声が上がった。慌てた地元漁協は仲買業者を調査したが、業者は否定も肯定もしない状態で、漁協としては独自調査には限界があるとして、漁港管理者である富山県に調査を一任する事態となった。築地市場では氷見産ブリは、他県産より最大で5割ほど高く取引されており、以前より氷見漁協から連絡がある水揚げ高よりも、築地に入荷する量の方が多いと云う疑念があった。一般的に氷見ブリは北海道や東北近海から南下し、氷見沖や近接する石川県七尾沖の定置網で採れ、氷見漁港に水揚げされたものを云うが、明確な規準や管理体制が無かった。そこで一部の業者が漁協を通さずに他県産を取引していると見られる。さらに流通に使う青い発泡スチロール箱も、仲買業者が独自に造って管理することも可能で、統一した形式はなく印字される文言も自由。氷見の仲買業者が箱に他県産を入れて売る余地があったようだ。漁協関係者も「ご先祖様の代からのブランド魚で、管理は業者のモラル頼り。登録商標は考えていなかった。甘かったかも知れない」と話している。長年に亘り明確な規準を作らずに、運用してきたのが災いした格好で、地元漁協ではブランド管理に乗り出した。

 農水産物の地域ブランド化は各地で行なわれている。地域ブランド化には、特許庁に「地域団体商標」を登録するのが一般的である。農協や漁協などの事業団体が申請し、審査に2年程度かけられる。農林水産省では2008年度から地域ブランド化の支援事業を実施しており、昨年10月時点で農林水産物や食品では、全国で238件が登録されている。超高級ブランドである「夕張メロン」(既号52.農政と夕張メロン)は、夕張農業協同組合が持つ商標で、夕張農協の組合員でなければ、このブランドを使ったメロンを出荷することは出来ない。全国屈指のサンマ漁獲量を誇る釧路市漁業協同組合は、刺身用サンマを「青刀(せいとう)」(既号122.大衆魚のブランド化)と名付けて、大衆魚のブランド化に取り組んできた。釧路漁協では消費者の安全・安心思考に対応するため、トレーサビリテイ(生産履歴の管理)の導入も進めた。漁船に積んだパソコンに、漁船名や船主名、漁獲日時やGPS(全地球測位システム)で記録した漁獲海域などを記録。釧路漁港に着くと、漁獲証明書として印刷し、出荷用の箱に貼り付けている。大分県旧佐賀関町(大分市)の沖で獲れる「関サバ、関アジ」は、漁業組合が組合員となっている漁師から買い取り、組合が中心となって販売や出荷を管理している。組合では登録商標のマークつきシールで原産地証明をして品質を保証。豊伊海峡を隔てた四国佐田岬半島とは13キロメートルしか離れておらず、漁場も同じであるが、関サバや関アジと称して販売する事は出来ない。大分県漁協佐賀関支店によると、水揚げは多いときで千本超、以前は尾にタグを付けていたが手間が掛かるため、現在では出荷本数に応じて箱にシールを同梱して店頭で貼ってもらっている。氷見漁協では各地のブランド化を参考に、氷見産ブリの海域確定、商標登録、氷見産と証明するタグの添付方法、タグなどのデザインの意匠登録、箱の統一の5項目をブランド管理策の柱として、今年秋までの実施を目指すことを決めた。

 氷見市は富山県西部に位置する市で、富山県高岡市や石川県七尾市(既号195.プロが選んだNO1旅館)、羽昨市、宝達志水町、中能登町に隣接している。面積は約230k屐⊃邑約51000人である。氷見漁港の防波堤延長は65820辧係留施設延長は1869m、利用漁船は400隻以上あり、水揚げ高は1500トン、漁獲金額は約60億円にのぼる。漁の特徴は定置網漁法による漁獲である。富山湾沖の20卆茲任1000m以上の深度となっており、深海の冷水が海面近くまで上昇する好漁場として知られている。氷見付近も大陸棚が5km沖合まで発達して浅い海が広がっている。そのため氷見沖合では天正年間(安土桃山時代)の頃から定置網漁法が発達した。氷見に発祥した定置網漁法は越中式定置網と呼ばれ、氷見漁港の漁獲高の80%は定置網漁法によるものである。主な水揚げは春のイワシ、夏のマグロ、冬のブリが特徴となっている。特に冬のブリは寒ブリ、氷見ブリと呼ばれ氷見産のブランド品として名高い。漁港には競り市が行なわれる氷見魚市場のほか、水産物販売や水産物を利用した飲食店が集積した道の駅氷見フィッシャーマンズワーフ海鮮館がある。漁港からは寒ブリ漁を見学する観光船が発着し、港では競り市の様子も見る事ができる。漁港は水産都市氷見振興の中核を担い、観光拠点ともなっている。


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