ブランドに学ぶ 儲けを生みだすビジネス・コラム

桃太郎のビジネスコラム 326

☆ アパレル企業の経営統合☆

2010.10.20号  

 1949年に住本保吉がアパレル会社の東京縫製を設立し、翌年に東京スタイルと社名変更した。住本は立体裁断を採用し、業界に先駆けて多サイズ化を進める。1964年にフランスのジャンヌ・ランバン社(既号227.ランバンとエルバス)、1970年には英コジャーナ社と提携。翌年にはマイドル、エヴィアン・ピコン、レポルテなどのブランドを発表し、ヤングミセスなどをターゲットとしたミッシー・カジュアル市場を創出した。その後もデリススポーツを販売開始してラージサイズ市場、ブリドールの販売開始でスモールサイズの市場を創出。この間、大阪支店や札幌営業所、福岡営業所を開設。事業拡大に伴って本社を東京・麹町に移転。そして1978年には東京証券取引所第一部上場に指定される。1980年にはパリにブティックをオープン。1985年にはスティルやアリスバーリーを発表する。1989年の平成時代に入ると香港に現地法人設立。中国・上海や蘇州には工場を建設。ジュラール・ダレル、22オクトーブル、ブリジット、モザイク、ビスティーなどのブランドも矢継ぎ早に発表。順調な拡大を続け、1999年には創立50周年を迎える。その後もスタイルコム、スタイルミー、ナネットレポーを発表。スタイルコムや22オクトーブルはインターネットによる販売も開始した。今年になってからはテレビ通販専門の新ブランド・パートネールの販売開始。都市型ファッションビルや準都心型施設向けの新ブランド・ラヴドゥローズを発表。ニューヨークのコンテンポラリー・カジュアルブランドのオートヒッピーを発表して、次々と新しい展開を模索する。しかし、世界の先進国における景気の落ち込みは、ボディブローを打ち込まれたように、企業経営が疲労に追い込まれた。世界のアパレル業界は互いに他国へ進出し、グローバルな優勝劣敗(既号244.アパレルブランドの倒産)へと突き進んでいる。

 サンエー・インターナショナルは1949年に、大阪市東区(現・中央区)で資本金200万円にて三永株式会社として誕生し、1987年に現社名に変更した。女性向けをメインとしたアパレルファッションで業容は順調に拡大し、2003年には東京証券取引所第二部に上場。2年後には第一部に指定替えをする。現在の事業内容は、婦人服、紳士服、子供服や服飾品の企画・製造・販売事業。ライセンスブランド事業。セレクト編集型ショップ・アウトレットショップを運営するなど、3事業を柱として内外に20社のグループ企業を擁ている。オリジナルブランドとして、ナチュラルビューティ、ヒューマンウーマン、ヴェールダンス、ピンキー&ダイアン、ピンキーガールズ、マーガレット・ハウエル、ジル・スチュワート等々、30余りを展開。ライセンスブランドとしては、キャロウェイアパレル、バービー、ケイトスペード・ニューヨーク、キャス・キッドソン(既号216.ネット世代のカジュアルバッグ)など、7ブランドを展開。アパレル上場企業8社の一角を占めるほど成長した。しかし、近年はユニクロ(既号161.世界ブランド「ユニクロ」)、それにしまむらの国内勢、GAP(既号243.世界一のカジュアルブランド)、ベネトン(既号202.庶民的価格で最高品質)、フォーエバー21(既号251.激戦区に殴り込み)、ZARA(既号255.ファッションは鮮度が命)、ヘネス&モーリッツ(既号217.ファスト・ファッションの雄)等の海外勢が攻勢を掛けてきており、押され気味の展開となっていた。

 近年のアパレル業界の推移を見ると、2003年には主要企業64社の売上高合計が約3.1兆円の市場規模で、以降拡大を続けて2007年には4.4兆円の規模に達していた。しかし、2008年には4.3兆円と減少に至っている。経済産業省の2008年版の商業販売統計によると、1998年から大型小売店の衣料品販売額は減少を続けていた。2008年決算ではユニクロやジーユーを傘下にしているファーストリテイリングと、ワコール・ホールディングスを除く上位7社が対前年比売上でマイナスを計上、アパレル業界全体では苦しい展開を余儀なくされている。アパレル業界が苦戦を強いられている原因は、消費者の消費価値観の変化による個人消費の低迷、百貨店の業績不振が挙げられる。百貨店を中心に展開している高価格路線を執っているアパレルメーカーは苦戦が続いている。一方の企画・製造・小売りの手法を執っているファーストリテイリングやしまむら等、低価格路線のアパレルメーカーは好調な業績となっている。ファーストリテイリングは今年になって若干かげりがあるものの、昨年までの業績は絶好調を誇り、国内では1000坪規模の大型店の出店を推進。海外ではニューヨーク、パリ、ロンドンなどの主要都市に展開。海外店舗数は50を数え、国内外で計800店を超える。景気の停滞感による消費者の購買意欲は低迷し、一部の富裕層を除くとアパレルの消費傾向は、安くて良い物に人気が集まっている。ファーストリテイリングなどのファスト・ファッションが消費者の支持を集める一方、百貨店を中心とした高価格帯のアパレルは敬遠される傾向がより一層顕著になっている。この数年でアパレル業界全体の勢力図も様変わりとなっている。2008年秋からは外資系企業が続々と参入し、銀座や表参道などに出店。ファスト・ファッション企業の競争に拍車が掛かると同時に、価格競争も益々激化してきており、体力勝負の様相を呈している。

 今月14日の新聞報道によると、アパレル大手の東京スタイルとサンエー・インターナショナルが、来年6月に共同持ち株会社TSIホールディングスを設立し、経営統合をすると発表。両社の直近の連結売上高の単純合計は1525億円。国内アパレルとしてはワールド、オンワードホールディングスに次ぐ3位グループに浮上する。東京スタイルはスタイルコムなど百貨店向けのブランドに強く、新興セレクトショップなどを買収して傘下に収めてきた。一方のサンエー・インターナショナルは駅ビルなどでの営業展開に強みを持つ。両社は統合により事業の相互補完が見込めると判断。今後は相互のインフラを活用し、さらなる合併・買収や海外展開の加速を目指している。サンエー・インターナショナルの三宅正彦会長は記者会見で、東京スタイルとの経営統合について「外資のファスト・トファッションの相次ぐ参入で、グローバル競争が激しくなった。今のままで勝ち組として残っていくのは非常に難しく、攻め続けるにはパートナーが必要だった。」「両社が持っているブランドのターゲット層は、競合せず摩擦が少ない。東京スタイルは財務基盤が強く、海外事業選択のメリットも多い。」と統合の意義を述べている。


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